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コラム 樹海

 大相撲の名力士・大鵬親方が定年を迎える。横綱・柏戸とともに「柏鵬時代」を築き「巨人、大鵬、卵焼き」の流行語を生んだ大鵬の強さは格別だった。柏戸は剛の攻めで鳴らしたが、大鵬は柔の相撲であり兎に角―負けない。懐が深く相手に相撲を取らせないでいつの間にか勝ってしまう。そんな積み重ねが優勝32回の金字塔を打ち立てた。この記録は大相撲史上最多を誇る▼名横綱・双葉山には69連勝という大記録があるけれども70勝目を掛けた一戦に敗れると「未だ木鶏にあらず」の言葉を残している。大鵬の32回優勝はこの連勝記録と並ぶものであり、大相撲の歴史に輝くものである。TV観戦だが、大鵬の強さは抜群と云っていい。強いと記したが「負けない」のである。余りに強すぎるので大鵬ファンが減ったの話もある程に相撲がうまい▼今や大相撲の世界もモンゴル人が横綱を張りロシア人が活躍したりもするが、大鵬の父親も露人である。言わば混血力士であり、身体つきも日本人とはちょっと違うように見える。あの「負けない相撲」には激しい稽古の裏打ちがあり脚と腰の強さが物を云う。30歳で引退するまで約10年張った横綱について聞かれると「孤独」とポツリ▼こんな名力士でも病気には泣かされる。36歳のときの脳梗塞は大変に苦しかったらしい。リハビリに励み復活したけれども、土俵での指導には苦心したようだ。現役の頃の活躍が認められ一代年寄・大鵬親方として後継者の育成にあたったが、この人の忠告は土俵に生きる者にとっては貴重な一言として胸に刻まれるに違いない。(遯)

 05/5/28