5月31日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】ブラジル国内が政治危機で翻弄される中、ルーラ大統領一行は慌ただしい三日間の日程で訪日、二十八日にはエネルギー分野で訪日の成果を上げた。ペトロブラスとの間に四件の大型プロジェクトを成約した他、小泉首相はバイオディーゼルとエタノールの日伯共同プロジェクト構想について、日本政府がブラジルに寄せる抱負を伝えた。首相はエネルギー問題がブラジルとアルゼンチンも含む大構想であることを示唆した。
小泉首相はエネルギー問題で日本政府がブラジルに期待しており、いかなる協力も惜しまない旨、意欲の程を示した。今回の訪日で取り上げられたエネルギー問題で話題の中心となったのは、ジウマ・ロウセフ鉱動相だった。
同相は五十年後には、世界のエネルギー源が水素化合物素材を原料とする時代へ移行すると述べた。この予測に、日本側要人も納得した様子だった。世界各国はその方向へ準備と努力をする必要があり、ブラジルは、推進役として資本協力を求めていることを表明した。
石油と天然ガスは、それまでの一時しのぎで、バイオディーゼルとエタノールは、新エネルギー源が発見され、温暖化問題が根本的に解決されるまでの橋渡し役であるとした。
日本政府がガソリンへの三%アルコール混入方式をブラジルのように国策で採用するなら、ブラジルは年間十八億リットルを日本へ供給する用意があると、同相は約した。
ブラジルはエタノール生産で三十年に及ぶ実績があり、世界水準の三分の一のコストで生産している。しかも補助金制度はなく、世界の追随を許さぬ製造技術力を有している。
日伯両首脳は近日中にも、エタノールの戦略的合同研究グループを立ち上げることで合意した。小泉首相は二十七日、大統領と鉱動相を関係閣僚の閣議に招き、エネルギー問題を討議した。閣議で特に取り上げられたのは、日本市場への長期にわたる安定供給の可否、国際市場で変動の激しいアルコール価格の安定が図れるかの可否だった。
行き着いた結論は、さとうきび栽培からアルコール生産まで設備一式の拡張、港湾までのロジスチックの整備、ブラジルと日本間の海運事情などシステム完備に対する資金協力だった。海上輸送は、ペトロブラスが一手に引き受けるらしい。
日本側の感触に、鉱動相は自信の程を大統領に見せた。近いうちに必ず日本側の反応があるという。ブラジルはベネズエラやアルゼンチンともエネルギー協定を結んだが、ケープタウン経由による日本とのエネルギー協定は数少ない確実な動きと見られている。
大統領一行は中部国際空港から帰国の途に着いたが、ロドリゲス農相はオーストラリア訪問へ旅立った。第一の目的は、民間銀行による農業融資システムの視察。第二はエタノール生産技術の売り込み。オーストラリアは広範囲にサトウキビを栽培しているが、エタノールは製造していない。オーストラリアがエタノールを製造すれば、ブラジルの砂糖市場が増えるはずという。