6月1日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三十一日】世界保健機関(WHO)はブラジル政府のタバコ規制への対応が遅々として進まないことにいらだちを見せる反面、タバコ産業が根強く経済に貢献していることを改めて強く認識し、政府が規制に対してジレンマに陥っていることを明らかにした。
WHOと世銀が共同でブラジル南部のタバコ栽培地帯の実状を調査した結果、地方行政とタバコ生産会社および農家の絆が深いことが判明、容易に減産や作物変更ができないことを思い知らされたという。
葉タバコの生産は世界各国に散らばっていたが、コストが安いことと、政府の免税などの優遇措置による誘致が功を奏して、発展途上国に集中した。現在では八二%が集中しているが、一九六二年代には五一%だった。
ブラジルでも時流に乗り、南部で国産ソウザ・クルスや外貨のユニバーサル・リーフやフィリップ・モリスなどが大型工場を建設した。二〇〇〇年から〇二年にかけて農家は一三%の増加を見せ、一五万三〇〇〇家族に達した。作付面積も二六%増となり、タバコの葉は三〇%増産となった。九八年から〇二年にかけてブラジルは世界第二位の生産となり、輸出は五〇%増とドル箱産業へと成長した。
タバコ会社の農家への支援と肩入れも充実している。高品質の葉を一定量納入する代りに、銀行融資の裏書保証から始まり、種子の供給、輸送手段の便宜、肥料や技術援助を行っている。いっぽうで地方行政も企業誘致に恩典を与えている。リオ・グランデ・ド・スル州政府は九〇年代、土地の無償提供のほか、ソウザ・クルスに九億レアル相当の免税措置を施した。また社会経済開発銀行(BNDES)は農家一万四千人に対し、インフラ整備用に五六〇〇万ドルの融資を供出した。
こうした背景のもと、WHOの国際タバコ規制協定にブラジル政府も署名したが、国会では批准されていない。協定のなかに、政府が葉タバコの生産を規制するという条約が盛りこまれていることから、リオ・グランデ・ド・スル州選出の国会議員が急先鋒となって反対ののろしを上げていることが、国会審議の遅れにつながっている。