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必要な人に行き渡らない医療=激しい貧富の差=2790万人が歯医者に行けず=乳ガン検診も3分の2だけ

6月3日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】ブラジルの医療システムは年々改善されているが、依然として貧富の差が激しい。裕福な階層は保健プランで満足のいく治療が受けられるが、貧困層は唯一、統一医療システム(SUS)の無料診察に頼るのみで、「最も治療を必要としている層にその場がない」のが現状だ。しかも医師の絶対数不足から待合時間が長く、不評を買っている。全人口の約一六%に相当する二千七百九十万人が、治療費がないために一度も歯科医にかかったことがなく、四十歳以上の女性の三分の一が乳ガン検査を受けたことがないなどの不均衡が明らかになった。
 ブラジル地理統計院(IBGE)が二〇〇三年に、北東伯の農村地帯を除く全国各都市の三十八万四千八百人を対象に調査した結果、全人口の一五・九%に相当する二千七百九十万人が歯科医の門を叩いたことがないことが判明。九八年に十三万三千人を対象に同様の調査を行った時は一八・七%だったことから改善の兆しを見せているものの、医療システムの遅れを如実に示している。
 家族の月収が最低賃金(三〇〇レアル)以下の階層ではこれが三一%へと増え、最賃二十倍以上の階層の二・九%に程遠い数字となった。歯の治療は健康の基礎ともいえるが、保健プランの適用がきかないため敬遠されがちだ。国内歯科医協会は世界人口の一一%が歯科医で技術も日進月歩しているとした上で、政府が何らかの支援を行い患者の足を歯科医に向けさせる政策が必要だと強調した。
 また、調査では過去十二カ月間に医師に診断をあおいだ人はわずか六二・八%だった。九八年では五四・七%だったことから改善はしているが、健康をおろそかにしている証拠だという。とくに何らかの持病を抱える慢性病患者が多く、六十五歳以上の高齢者の七七・六%がかかっている。全体では女性(三三・九%)の方が男性(二五・七%)より多く、五千二百六十万人と言われていることから、ひんぱんに医師に相談すべきだと勧告している。
 いっぽうで四十歳以上の女性の三分の一が乳ガンの検査を受けたことがなく、五十歳以上になると四九・七%と半数に上っている。コスタ保健相はこの報告を受け、女性は全員検査を受けるべきだとした上で、SUSの患者に検査を義務づける措置を取りたいとの方向性を示した。
 〇三年に行った子宮ガン撲滅のキャンペーンで、二十五歳以上の五分の一が検査を受け、このうち学歴が一年以内の人の五五・八%、大卒者の九一・三%が好結果だったことから、乳ガンにもキャンペーンを適用したいとしている。
 医療保健プランには人口の二四・六%に相当する四三百二十万人が加入している。このうち三千四百二十万人は個人加入や会社などの団体加入で、九百万人は公務員や軍隊向けとなっている。二八%は市内在住者で農務者は加入していない。また最低賃金以下の収入者はわずか二・九%で、二十倍以上の所得層が八三・八%を占めている。プランは九〇年代に発足、年に一〇%以上で増加してきたが、ここ数年は、値上げ幅が大きいことから契約破棄が相次ぎ、四百万人から五百万人がプランを放り出したという。