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コラム 樹海

 新聞や雑誌などの「見出し」というのはそれなりに難しい。云わば店屋の看板なのであり「見出し」で記事を読ませる。近ごろは銀行でも「りそな」のラテン語を使って人々の目を奪う。日本語にすれば「共鳴」や「反響」だが横文字の魅力は捨て難いらしい。そんな「見出し」の傑出したものに「天国に結ぶ恋」がある▼昭和7年に神奈川県大磯の坂田山で起きた調所五郎と湯山八重子の若い二人が心中した事件を指し映画にもなる。流行歌「天国に結ぶ恋」は四家文子が歌ったビクタ版が大ヒットした。この映画と歌が「心中時代」の端緒となったのだが、どうも日本人は相対死と自殺が大好きらしい▼婦人記者・波多野秋子と軽井沢で死んだ有島武郎。「斜陽」「人間失格」の太宰治は、バーの女給と心中をはかり自分だけが生き残る。次ぎは内縁の妻・小山初代との心中未遂。玉川上水で山崎富栄と入水自殺しやっと念願の死を迎え天国に昇ったのだが、果たして本当に幸せだったのかどうか。芥川龍之介、川端康成、三島由紀夫と自裁の文学者は多い▼と、こんなことを記したのは日本の自殺者が3万人を突破したの報道からである。健康の理由が動機は解るにしても、第二位の経済的な理由で縊死やガスで自らの生命を絶つとなると、理解し難い。カネの無い苦しみには同情するけれも、死んでは何にもなるまい。生きてこその解決策であり死ねば「全てがゼロ」は甘すぎる。困難と苦渋に耐えて力強く生きる大切さを是非とも学んでほしい。そうすれば必ずや真っ青な空が輝く―。「死」から生まれるものは何もない。(遯)

  05/6/7