6月9日(木)
ルーラ大統領が訪日した際に両国間で結ばれた「社会・教育分野における覚書」に基く、ブラジル支援プロジェクトの署名式が七日午後、サンパウロ総領事館で行われた。この覚書の中には「草の根・人間の安全保障無償資金協力」も含まれ、その対象として全伯十六団体が挙がっている。同管内では福祉関係三団体に計約四十万レアルの供与が決まっており、丸橋次郎首席領事と団体代表者間で署名が交わされた。式には外務省サンパウロ代表事務所のジャディエル・デ・オリベイラ大使も出席した。
被供与団体は、マット・グロッソ・ド・スール州カンポ・グランデ市のペスタロッジ協会(障害者教育を実施する非営利団体)、サンパウロ市のドリナ・ノヴィヴ視覚障害者基金、そしてサンパウロ州イタプイ市のAPAE(身体・知的障害者とその家族を支援する非営利団体)。
また、以前に申請され審査を通っていたサンパウロ州クレメンチーナ市の貧困農民支援計画への資金協力に関する署名も同日、交わされた。
五十九年間にわたって、視覚障害者教育や、社会参加を促すための点訳図書を発行してきたドリナ・ノヴィヴ視覚障害者基金のアルフレド・ワイズフログ会長は、「少量生産に対応する点字印刷機材がなく、必要としている人に行き渡らなかった。本部の建物には手すりや警告ブロックも設置されていなかった。必要なものがやっと揃うことになる」と謝辞を述べた。
イタプイAPAEのヴァンディル・ヴィアロ会長は感激した様子で「障害者の通園する施設は老朽化がひどく、四歳から九十四歳までの生徒九十四人はやっと救われる。ありがとうございます」と声を震わせた。
ブラジル外務省を代表してオリベイラ大使は、「百年前からブラジルに恩恵を与えた農業、漫画やアニメなどの文化など、日本人がブラジルに与えてくれたものは大きい」とした上で、「事務所職員全員が幸せに思っている」と感謝した。
外務省では来年三月までのプロジェクトの完了と、一年以内の引渡し式を予定している。「今四件に関しては年度内の完了を見込んでいる」(同総領事館関係者)という。
一方、このブラジル支援プロジェクトで協力対象になった十六団体のうち、唯一の日系団体、パラー州サンタ・イザベル市のエスコーラ・ニッケイ(ネグラン・カトウ・マリア・デ・ファチマ校長)では、建物増築や視聴覚・情報機材のため、約二万八千ドルの供与を受ける署名を二日、同校で交わしている。