6月11日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】隣国ボリビアの政争で、反政府デモ隊が精油所を占拠して生産を止めたため、ブラジルへの天然ガス輸送が一部停止した。それにより国内でガス不足が表面化、深刻な状況に陥っている。
ブラジルは一日の消費量三九〇〇万立方メートル(精油所での消費を含まず)のうち二四〇〇万立方メートルをボリビアからの輸入に依存していることで、政府としてはよもや政争の波紋が押し寄せてくるとは予期しておらず、対策に大わらわとなっている。近日中に輸入は五〇%を割ると見られており、天然ガスの配給規制は避けられないとしている。すでに精油所や火力発電所向けでは減量が始まった。
いっぽうでボリビアの革新派は外国企業を没収して国営化する動きを見せており、ペトロブラス(国営石油公社)の現地法人もその対象となっていることから、政府はこれを阻止するべく対策の検討に入った。国営化によりモノポリー(独占化)となり、将来、天然ガスの価格や供給量に不安定な要素が生じることを危惧している。
これに対しルーラ大統領は九日、特命大使を現地に派遣して交渉に当たらせている。アモリン外相は、「ボリビア新政権の決定に内政干渉する気はないが、隣国同士のこれまでの歴史から友好的な解決を期待する」と語った。
政府は天然ガスを使用している車、とくにタクシーや家庭、工業には最小限の規制を施したいとの意向を表明している。家庭のプロパンガス(LPG)の供給は心配ない。ガス燃料の乗用車は実数が把握されていないため、政府主導でメーカー、ガス供給機関の代表者で対策委員会をたち上げることになった。
工業界で最も打撃を受けるのはセラミック工業で、窯を従来の電気や石炭から天然ガスに変えたのがほとんどで、また元に戻すのに費用と日数を要する。各社の在庫は平均三十日間で、天然ガス不足で減産に追い込まれると、契約している輸出量を満たせず、国際的信用を落し、せっかく築き上げた輸出基盤を失う羽目になると危惧している。
ペトロブラスはこれに対し、リオ市のバシア・デ・カンポ採油所で日量二〇〇万立方メートルの増産と、焼却していた一〇〇万立方メートルをサンパウロ州向けに供給することを決定した。