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デカセギへの=教育と医療、優先対応=名古屋訪問のルーラ大統領語る―橋本在日ブラジル人企業家協会代表にきく―

6月11日(土)

 県連主催の「日本祭り」にも出展する予定の在日ブラジル人企業家協会(ABC JAPAO)の橋本秀吉代表に、五月二十八日のルーラ大統領による名古屋訪問の様子を取材してみた。大統領は午後三時ころ、名古屋の第三回エキスポ・ビジネス会場に到着した。会場入り口ではブラジル学校生徒数百人が日伯の国旗を振り、歓声とフラッシュの中を大統領一行は会場に入った。セレモニー会場へ行く道すがら、物々しい警備と裏腹に参列者との記念撮影に気軽に応じた。
 エキスポ・ビジネスの出展数は百五十ブース、二日間の来場者は六千人を数えた。在日ブラジル人企業者協会も協会自体のブースと、雑誌『MADE IN BRAZIL』ギャラリーの二つのブースを出した。
 同ブースでは在日日系企業関連地図の配布と、サンパウロで開催される「日本祭り」への参加呼びかけを中心に活動した。ギャラリーでは日本で生活しているブラジル人アーティストの絵や写真を展示した。日本人の来場者も多く、『MADE IN BRAZIL』への期待する声がたくさん寄せられた。
 ブラジル学校生徒によるフォホーの演奏やカポエイラ演技の後、二人のブラジル学校の少女から大統領一行へ歓迎とお願いのメッセージが読み上げられると、大統領は身を乗り出し聞き入り大きな拍手をおくった。
 子供たちに応えるように「子供の頃ブラジル北東部から離れて生活した体験から、皆さんの気持ちがよくわかる……。日本政府とも話し合いいくつかの事を合意した。『日伯21世紀協議会』だけでなく、ブラジル政府は各機関に話しをおろし、全力をあげて出稼ぎ者の教育と社会保障の対策をとる事を約束した。とりわけ教育と医療の問題を優先して対応すると参列者に告げた」。参列者からはルーラコールと拍手が鳴りやまなかった。
 いままで大統領に批判的だった人たちにも、大きな元気と勇気を与えたことは確かだ。特に原野に放り出されたような状況下にある子供たちや、孤高に試行錯誤を続けてきたリーダーたちにとっては、来年の大統領選へのリップサービスでは、という疑念をこえて気力を与えたのは確かだ。
 日本で発行されたポ語新聞各紙の一面には、ブラジル人少女を抱きしめ涙を流すルーラ大統領の写真が掲載された。小泉首相のブラジルでの涙、ルーラ大統領の日本での涙・・・。日伯の絆は確かに深まったのでは、との期待をもたせるのに十分な今回の訪問だった。
 しかし、この間、在日ブラジル人社会にとって大きな出来事である「大統領の訪日」と「二〇〇八年日本移民百周年」「ブラジル人デカセギ二十年」のことは、日本のマスコミからは全くといっていいほど報道されなかった。ブラジル人少年犯罪だけが大きく取り上げられ、ブラジル人少年たちが置かれている状況を考えようともしない日本の現実を改めて強く感じさせた。
 「在日ブラジル人による日本人向け情報誌『MADE IN BRAZIL』の発行の重要性をかみしめました」と橋本会長は語った。