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消費者のロボット化進む=ネット販売で加速=心理操作で衝動買いあおる=回復したい心の通う取引

6月15日(水)

 【ヴェージャ誌一九〇二号】経営管理の始祖ピーター・ドラッカー氏は「経営とは不要なものを売ること」だと喝破した。ドラッカーは販売努力を主張したつもりだが、経営者が理解したのは消費者が欲しくない物を押し売りすることだとハーバード大学のステフェン・カニツ教授は皮肉な見方をした。現在では、商品の素晴らしさを消費者に説明し納得してもらうなど、時代遅れなことをいう販売主任はいない。消費者の疑問に答える必要はないし、商品の特長も利点もヘチマもない。
 現代の販売促進で、そんな面倒なことは無用。超一流の広告代理店と契約をすれば済む。広告代理店はテレビでファンタスティックな宣伝をやり、消費者を洗脳してくれる。テレビの前に座った消費者のほとんどは、頭の中が無風の真空状態。広告代理店によって心理操作されたロボットだ。
 テレビの宣伝を見た消費者は、我先にスーパーへと走り、戦場で一番手柄を挙げた陣笠のように棚の商品をつかみ取る。レジへ行くと、高かろうが安かろうがお構いなしに代価を払う。消費者は時代の最先端を歩いているつもりなのだ。
 商品説明なんて、アホらしい。販売員もスーパーも卸も販売拠点も不要の時代が、すぐそこに来ている。インターネット販売という現代の魔物がそれ。メーカーと消費者という概念も、なくなりつつある。
 ネット販売の九九%は、商品の写真もないし、あっても申し訳程度に片面写真があるだけ。疑問解消のための電話番号も最近なくなった。電話番号があっても応対する人間がいない。買うか買わないかの一方通行。
 コンピューターには消費者の質問が想定されていて、回答も五つほど設定されている。あなたの質問は、五つのうちのどれかに該当しなければならない。五つのボタンの一つを押せという。相手はロボットでこっちもロボット。
 何万種類の商品を扱うネット百貨店では、類似商品の違いを質問する方がおかしい。インターネット販売では販売努力の心意気は排除され、商品についての質問も禁止。メーカーは今後、販売をCRM(ネット販売請負業者)に委託する。メーカーは売るという概念を忘れるようになる。
 営業担当の重役は、広告宣伝係りに降格する。人類は迷路を突進しつつある。ロボットによる販売でなく、人間の触れ合いを回復したいものだ。恐らく新聞やテレビの広告担当者は、同じことを考えている。
 宣伝広告は必要な商品の販売ではなく、衝動買いさせることが目的になっている。動機付けや感動、共感意識、仲間意識など、宣伝の背後にあらゆる心理操作の技術が隠されている。消費者は無意識のうちにロボット化され、引き回されている。
 快適な生活スタイルとか優雅な生活、中流意識なる言葉が最近、ひんぱんに登場する。消費者は何も考えず無意識のうちに、風潮という流れに引きずり込まれて行く。企業は商品を売るよりも、社会的責任を悟るべきではないか。
 昔、百科事典の販売員訓練を行った時代が懐かしい。商店の売り子見習がカウンターの上でほお杖をついた時代は、心と心の通う取引が行なわれた。口下手の者は百科事典を売ればよい。口達者はコンドームを風船だと言って売るから、救いようがない。
 あなたの会社が経営不振なら、パロッシ財務相の経済政策が悪いのではない。高金利でもドル安のためでもない。あなたの周囲をロボット化する最新販売技術の勉強を忘れたからだ。

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