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コラム 樹海

 ブラジル観光公社が、日本人観光客を増やそうと張り切っている。三年以内に現在の二・五倍にあたる十万人をめざすという。それはいい▼しかし、現在のままでは、バックパッカー(背中にリュック一つ背負って来る身軽な旅人)の往来が多少繁くなるのみで、公社がねらう〃オカネを落としてくれる〃観光客は増えないだろう▼わたしたちの新聞社に留学研修生が、毎年のように来て、記者の仕事を研修する。ブラジルが好きになった若者は、帰国後、両親にも見せたいとブラジルを宣伝してくれる。親のなかに、息子がそんなに言うのなら、と来伯する人もいた▼絵葉書にもあったリオのコパカバーナ海浜を早朝散歩し、いい気分でいるとき、強盗に襲われた。実際、そのケースが二件あった。息子のブラジルPRとの断層の大きさに驚いたであろう。体験した親たちの気持を察すると暗澹たるものがある。好きになりそうだったブラジルがいっぺんで嫌いになる▼七年ほど前だったろうか。好奇心に富んだ大学教授がリオ市内のボンデに乗って襲われ、命を落とした。「日本政府は、大使館を通じ遺憾だと抗議すべきだ」と書いた記憶がある。両国にとって、建設的だろうと考えたからだ▼治安さえよければ、シルバー移住だってありうる。ブラジルに興味を持っていて、旅費くらい捻出するのがさほど難しくない人たちにとって「治安が悪いこと」のみが、来伯観光のブレーキになっている。このことを当局が知らない限り、少なくとも日本人観光客は伸びまい。(神)

05/6/15