6月16日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】サンパウロ州西部プレジデンテ・ヴェンセスラウ市の刑務所で十四日、受刑者による暴動が発生し、受刑者五人が殺害され職員十一人が人質となった。暴動は開所十九年間で最大規模のもので、殺害された五人はいずれも首を切られ、一つは避雷針のてっぺんへ、あとの二つは屋上の鉄棒に突き刺され「さらし首」とされた。さらに暴動者らは、屋上で残りの頭をサッカーのボールに見たて蹴り遊ぶという非道な行為に出た。
同刑務所は定員六百八十人に対し七百八十人が収容されていた。暴動は作業場にいた一部の服役者により始まったが、またたく間に全員に広がった。台所や図書館、教習所に火がつけられ、全ての施設が破壊された。
暴動の原因は明らかにされていないが、刑務所関係者は、内部の勢力争いとシャバでの抗争が尾を引いたものと見ている。所内には首都第一コマンド(PCC)が大半を占め、抗争相手の自由民主コマンド(CDL)やリオ市のコマンド・ヴェルメーリョ(CV)とアミーゴ・ド・アミーゴ(ADA)が収監されていることから、PCCが仕掛けたと見ている。
暴動発生直後、八人の職員が人質の難を逃れたが、その中の一人は、殺害された五人は麻薬代金などの何らかの借りをPCCにしていたが、未払いが続いたため見せしめとなったと証言している。十四日夜に入っても人質は解放されず、暴徒らは具体的な要求も出していない。またPCCに死の宣告を受けて隔離されていた八十人の服役者は他の刑務所に移送された。
この地域周辺百五十キロ以内は刑務所が集中し、二十三カ所で一万五千人が収監されている。近くのプレジデンテ・プルデンテには凶悪犯を収容するサンパウロ州最強の刑務所があり、麻薬王のベイラ・マールが収監されて有名となった。
PCCはシャバでの勢力が衰えたことで内部抗争が激化し、刑務所内での仲間割れが目立ってきた。四月二十八日にはナンバー2と目された幹部が身内に殺害されたのを契機に、これまで二十九人が殺害されている。昨年の所内での殺人総数が二十九人、一昨年が二十七人だったことから、いかにPCCとの争いが激しいかが伺える。