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追悼行事しめやかに=日本移民97周年=文協法要に5百人=ミサにも要人集い

6月21日(火)

 六月十八日、ブラジル日系社会は「日本移民の日」を迎えた。最初の日本移民七百八十一人を乗せた笠戸丸がサントスに入港してから今年で九十七年。十八日には市内の各所で慰霊行事が実施され、多くの人が志半ばでたおれた開拓先亡者の苦労を偲び、その功績を称えた。日本移民百周年まであと三年。今年の慰霊行事では出席者から二〇〇八年を見据えた言葉も多く聞かれた。移民の日にあわせ、文協講堂では来伯中の東京演芸協会による公演も開かれ、訪れた人を楽しませていた。
―文協法要に五百人―
 「日本移民九十七周年記念開拓先亡者追悼大法要」が十八日午後一時半から、ブラジル日本文化協会大講堂で行われた。ブラジル仏教連合会、文協、ブラジル日本都道府県人会連合会、釈尊讃仰会、ブラジル仏教婦人連盟の共催。週末にもかかわらず、この日は約五百人が会場を訪れ、先人に手をあわせた。
 「先人の苦労と努力の上に現在の日系社会が成り立っている。これからも、ブラジルに住む者として恥かしくないよう、人間としての道を歩んでいくことを誓います」、釈尊讃仰会の斎藤茂正会長による開会の辞に続き、舞台では献花、献茶、献灯。会場にはエスペランサ婦人会、仏連コーラス、白樺コーラスによる歌声が流れる。
 稚児行列の先導で導師入堂。法要は来賓による追悼の辞に移った。上原文協会長、丸橋次郎サンパウロ総領事館首席領事、石橋隆介JICAサンパウロ支所次長、酒井精一サンパウロ日伯援護協会会長が壇上に上り、先人への感謝の言葉を述べるとともに、日系社会の現状、将来に向けた報告を行った。
 上原文協会長は「先人たちの苦労と教育への情熱が、日系人の社会進出につながり、日系の地位向上に寄与しました」とその功績を称えた。三年後の日本移民百周年についても触れ「(百周年は)積み上げてきた歴史の集大成。新たな出発点となる節目の年として、ブラジル社会の将来を担う若い人たちとともに盛り上げていきたい」と決意を述べた。
 続いて丸橋総領事代理が追悼の辞を読み上げた。総領事代理は、日伯両政府が二〇〇八年の日伯交流年に向け準備を進めているとした上で、「移民百周年の主役は日系のみなさま。先亡者の物心両面の遺産を大切に、世代や地域をこえた話し合いを続け、二〇〇八年が日伯両国にとって実り多い年になることを願います」と述べた。
 諸僧・導師による読経に続き、ブラジル仏連会長の采川道昭師があいさつ。諸僧の退場後、浄土宗南米開教総監の佐々木陽明師が法話を行った。佐々木師は「百周年まであと三年。次の世代に何を願うのか、一人一人が考えていきましょう」と説いた。
 出席者による一般焼香。今年もまた、会場に長い列が続いていた。
ミサにも要人集い
 日伯文化協会(上原幸啓会長)、日伯司牧協会(PANIB)による「日本移民九十七周年記念先駆者慰霊ミサ」が十八日午前九時から、サンパウロ市ジョン・メンデス広場のサンゴンサーロ教会で執り行なわれた。日系団体関係者など約百五十人が出席。先人たちの苦労に思いをはせ、九十七年目の移民の日を祝った。
 上原幸啓文協会長のほか、丸橋次郎首席領事、石橋隆介・JICAサンパウロ支所次長、中沢宏一・ブラジル日本都道府県人会連合会会長、酒井精一・サンパウロ日伯援護協会会長、田中信・ブラジル日本商工会議所会頭など関係機関、団体から代表者が出席した。
 冒頭、司会の三宅信夫さんから、先人の労苦を偲びその遺徳を称える言葉が述べられた。アレッシオ神父ら五人が壇上に上りミサが始まる。
 賛美歌に続き、アレッシオ神父が日本語で説教。神父は「神は最初から日系コロニアを守ってきた」と述べ、「先人の知恵を元にすばらしい未来をつくりましょう」と呼びかけた。
 続いて代表者による共同祈願。上原会長など五人の代表がそれぞれ神への感謝の言葉を捧げ、世界の平和や日系人への加護を祈った。
 共同祈願の後、アレッシオ神父による聖体拝領が行われミサは終了。出席者たちは各所で「おめでとう、おめでとう」と言葉を交わしていた。
―慰霊碑で先人偲ぶ―
 ブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)は十八日午前十時半からサンパウロ市イビラプエラ公園の先没者慰霊碑前で、日本移民開拓先亡者追悼法要を行った。日系団体代表ら約百五十人が列席した。
 慰霊碑前には各県人会の先没者名を記した過去帳がおかれ、ブラジル仏教連合会が法要を執り行った。
 中沢県連会長は、「三年後の移民百周年を目指し、よりよい日系社会の構築を誓う」とあいさつ。
 続いて、サンパウロ総領事館の丸橋次郎首席領事も言葉を述べた。
 読経が響く中、出席者らは献花・焼香を行い、開拓の前線で志半ばにして倒れた先駆者を悼んだ。
 出席者の一人、県連前会長の網野弥太郎さんは、「毎年参列者が少なくなっている。過去を忘れて、どうやって百周年ができるのか。歴史をもう一度振り返ることが必要なのでは」と法要後、記者に語った。
 なお、慰霊碑が今年、建立から三十周年という節目を迎えるにあたり作成された、慰霊碑建立の歴史を記録した記念小冊子が配布され、参列者は関心深げに頁をめくっていた。