最近ゆえあって山田風太郎の『人間臨終図鑑』を耽読している。古今東西の人々の死に様を綴った本で、三巻まである。
ゆえといっても、たいしたものでない。ハゲ・腰痛の進行で老いを自覚し、また、父親となり、人生を多少本気で考えるようになったせいだ。
青春のならいで夭折に憧れたこともあった。源義経、中原中也、佐伯祐三は三十歳で絶命した。むかし憧れた詩人も交じるが、いまその齢の私は一年でも長生きしたい。
十八日の東京演芸協会文協公演に出演した野菜吹奏のはたのぼるさんは、一九二七年の生まれである。楽屋で着替え中のところをお邪魔した。若々しい体形に驚いた。「長生きも芸のうち。末永く、皆さんを楽しませたいですから」
この言葉に刺激された私は、三日坊主で止めたばかりの水泳を再開するため、帰宅後、押入れの水着を引っ張り出した。 (大)
05/6/21