6月22日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】サラリーマンの敵、インフレを退治するのは間違いではない。しかし、さらに深刻な問題を差し置いてインフレにばかり気を取られるのは、通貨政策の落とし穴だと、シティ・バンクのアマラル元頭取がいう。
厳しい通貨政策を採ったにもかかわらず、結果は失敗だ。九カ月連続で基本金利を世界最高水準にまで引き上げたが、インフレは六%を下らない。しかし、政府はインフレにばかり気を取られ、ここに通貨政策と為替政策の落とし穴があることに気付かない。
二〇〇五年後半から〇六年末にかけた十八カ月間の国際経済情勢は要注意。世界経済が減速する中、米国は公定歩合を引き上げる。通貨不安と不確定時代が来ると、シティコープが警告する。
レアル通貨の高騰は、高金利に魅せられた短期投機資金の流入が原因。しかし米国は〇五年末、公定歩合を三・五%に引き上げる。十年決済の米国債は五%の配当を行う。これでブラジル国債も、魅力が薄れる。
さらに中央銀行は下半期、基本金利の引き下げを余儀なくされる。すでに景気の冷え込みが顕著な中、金利を一九・七五%に引き上げたので、公共債務が限度枠を超えそうだ。
〇五年下半期は短期の投機資金が、いっせいに米国向け流出する。現在のドル安が二・九レアルレベルのドル高へ移行する。輸入資材も一斉値上げが始まる。インフレ圧力も懸念される。これが現行通貨政策と為替政策の落とし穴なのだ。
この事態の対処法はあるか。中銀は、また金利の引き上げを行うか。しかし、今度はブラジル経済が音をたてて落ち込み、再起不能までのダメージを受ける。基本金利の引き上げは、長期間行えない。
私のプロ体験からいうなら、普段から有事に備え体制を整えている者には、ピンチはチャンスだ。しかし,PT政権は残念ながら、国際情勢の変化については無知に等しい。ジルセウ官房長官は相変わらず、時代に逆行して公務員の増員を行っている。
パロッシ財務相が世界不況に備えて政府経費のカットを行うよう切に祈る。それをしないと、世界不況の渦に呑みこまれる。経済スタッフは、財政は健全であると大統領に報告する。しかし、政府経費の垂れ流しは止まらない。
来たりつつある世界不況では、ハイパーインフレの到来が予想される。対処は、基本金利の引き上げしか能がないのか。世界不況の中での金利引き上げは、ブラジル経済の自殺行為だ。国内総生産(GDP)に対する債務率は限界にあり、外部から不況の荒波が来たらブラジル経済は倒産する。