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向かうはEUか、米国か?=国家の命運決める難題

6月22日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】フランスとオランダの国民投票でEU憲法が拒否された。この挫折とブラジルへの影響を国連貿易開発会議のリクペロ前事務局長が検証した。IT(情報技術)の進歩でグロバリゼーションとサービス部門の第三セクター化の進展が予想されていた。ところがEU統合に示されるグローバル化は挫折、ITだけが近代社会の怪物へと変貌した。
 順調だったEU統合にブレーキがかかったが、本来のグローバル計画はEU国民の拒否反応にかかわらず進行するとみられている。EUはめでたく結婚には至ったが、ベッドで同床異夢を描いているようだ。
 EUの挫折と、メルコスル、米州自由貿易圏(FTAA)構想、ブラジルの対外政策との関係はどうなのか。ブラジルにとってEUシフトか米国シフトかの選択は、国家の命運を決める。ただどちらも、ブラジル向きでないのが難点。
 対EUの場合、製品とサービス貿易でほとんど合意に達したが、農業では全く譲歩しない。対FTAAも同じ。対米交渉で米国の要求を全面的に呑めば、ブラジルの要求も全面的に呑むかと質問したらノーと答えた。米案はチリなどの小国向きなのだ。
 EUは十一月、元ポルトガル首相のバローゾ委員長を中心に動き出す。フランスやオランダの国民投票に関係なくグローバル化政策は実施される。政治日程からみると、既に秘密裡に交渉が行われていた中東和平から着手すると思われる。
 イスラエル政府に対する従来からの米国とEUの思惑が複雑に絡み合うものと想像される。イラク武力介入で米国とEUが意見を異にしたように、政策の相違が随所で予想される。中東の石油と核の問題を巡り、両陣営の政策は交錯している。
 ブラジルとEUの関係は、国連を通して密になる。世界貿易機関(WTO)の専務理事候補ではドジを踏んだが、常任理事国入りでは成功すると見ている。ルーラ大統領とカルドーゾ前大統領は、歴代政権の中でも稀に外交を重視し、ブラジルの国際的地位を高めた大統領であった。