6月22日(水)
開拓精神見つめなおし将来担う力を――。パラナ州のブラジル日本移民九十七周年先没者慰霊祭が十八日午後、ローランジア移民センター内会館で行われた。 例年は屋外の開拓者慰霊碑前で行われるが、天候の都合で屋内に変更されたものの、会館は来場した約二百五十人でぎっしりと埋まり、先没開拓者に対し感謝と畏敬の念を表した。
一九五八年の移民五十周年祭から始まったパラナ州の慰霊祭は、毎年文化連合会(上口誠一会長)と文化運動連盟(西森弘志理事長)合同で行われているが、合併に伴い共催は今年までと見られている。
同センターには、七八年に七十周年を記念してパラナ州日本移民資料館が建てられ、隣には八十周年、九〇周年の記念碑が並んで建つ。すでに百周年記念碑建立の土台も用意されている。さらに百周年事業の一環として昨年落成したパラナ州開拓神社がその横にあり、日系コロニアに尽力した二十人が祭られている。
慰霊祭には萩生田浩次クリチバ総領事、エウリデス・モウラ・ローランジア市長を迎え、上野アントニオ元連邦下議、今年白寿を迎える笠戸丸移民の中川トミさんも臨席した。
ローランジア洞光山佛心寺の黒沢慈典住職によって追悼法要の読経がされる中、列席者は思い思いに焼香、先祖や友人らの冥福を祈った。家族で参加した若者も焼香する姿があった。
上口会長、西森理事長がそれぞれ主催者として追悼の辞を述べ、萩生田総領事は「イタリアやドイツに移住の時期は遅れたものの、日本からの移住者はパラナの原生林を開拓し、誠実や勤勉さを忘れずに歩んできた、今ではすっかりブラジルに溶け込んでいる」と先人を称え、「在伯日系人と日本で出稼ぎをする日系人は、グローバル社会の原動力となる人的絆であり、資源である。先亡者には努力が何よりのたむけになる」と参列者に語りかけた。
式典の合間にはローランジア文協太鼓部が「響」を力強く演奏、若い力をアピールし、先日の全伯太鼓コンクールで優勝したロンドリーナ一心太鼓が貫禄のバチさばきで会場を圧倒した。
また、日語作文コンクール入賞者表彰式を間にはさみ、パラナ文化功労者の表彰式が行われ、萩生田総領事らから賞状と記念品を渡されると、功労者たちは感激した様子で互いに肩を叩き合った。
公証翻訳人として四十四年間翻訳業に携わり、翻訳の部で受賞した江頭美さんは答辞として「日本文化伝承に努めたい」とこれからの活動への意欲を見せた。
受賞者は以下の通り。カッコ内は部門、敬称略。岩継道廣(報道)、江頭美(翻訳)、折笠力己知(歌謡)、高橋丹次(浪曲)、西美津江(茶道)、橋本清隆(日系団体運営)、松崎文子(日本語教育)、真中武(将棋)、森田吉久(文芸)。さらに特別追悼として昨年なくなった藤島一夫さんに歌謡の部の功労賞が贈られた。