昨年十月に起きた南米開発青年隊協会のケンカ騒ぎや胸像拉致で、最も心を痛めたのは下元家ではなかったか。本来は青年隊内部のイザコザなのに、良くない形で家の名前が出てしまうとばっちりを受けた▼今回の除幕式の後にも、またこの問題を蒸し返そうとする人が来社した。「除幕式を強行したことが問題。現役員の体質を問題にしたい」と憤り、昨年十二月に下元家から青年隊に送られた文書を出した。そこには「いつまでも喧嘩騒動までされるようなら、あの胸像は溶かしてスカッタ(くず鉄)にして売り払い、僅かでしょうが其の金を文協にでも寄付してくれるようにお願いします」との強い気持ちまで書かれていた。当の家族の心労はいかほどか▼今回の式典には長男、次男はじめ十人もが出席し、事態を終わらせようとする家族の強い意志が感じられた。胸像設置うんぬんは本来、青年隊内部の問題であり、下元家と関係ない形で処理すべきだ。恩人である健吉氏のファミリアを巻き込み、その気持ちを踏みにじってはいけない▼むしろ、除幕式後の昼食会で話題になったのは〇七年の「健吉氏没後五十周年」だ。生誕百周年は九七年に過ぎてしまった。思えば健吉氏に関する文献も三十年ほど前に人文研が出して以来、まったくない。百年祭前夜祭として、関係団体が一致協力して取り組むのも前向きなことだ。コロニアにとって本当に大事なのは、胸像ではなく、顕彰されるべき恩人が忘れ去られないよう努力することではないか。 (深)
05/6/23