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コラム 樹海

 日系団体が記念史を刊行するとき、日本語で編纂するのはこれが最後だろう、とかいう話をよく聞く。執筆者、編集者が、老いていなくなるからだ。それはかなりの部分当たっていると思う。尤も、日本から来る若い人に仕事を委ねれば、血が通ったものができるかどうかは別にして、本はできる▼最近、『アチバイア文協五十年史』が完成、披露された。ぎっしりと、内容があり、読みごたえがある、というのが手に取ったときの第一印象だった。記述の分野というか、項目(章)のつくり方がうまい。各項目は、しっかりと書き込まれている▼執筆編集は、元アチバイアの営農者、水野昌之さん、八十一歳。九歳で家族と渡航した子供移民だ。戦時中、早稲田中学講義録で日本語を勉強した。戦後邦字新聞記者、農産組合勤務を経て、ブラジル日本商工会議所の『ブラジル経済年鑑五七年版』を派日されて完成させた。その後、農業を志しアチバイアに入植、四十年間営農した人だ▼今度の記念史の編集話を受けたのは、八十歳になろうというとき。最初、編集だけで執筆はしないはずだったが、依頼・出稿原稿をみて、ダメと判断、自分で書かなければならない状況に陥った。各分野の人に集まってもらい、座談をし、それが資料集めとなった▼アチバイアは日系人の一大集団地で、その分多岐の事業が繰り広げられた。その地の文協の五十年を八十歳を越えた人が、ベテランらしくまとめあげた。記念史づくりは、土地勘のある人がやればいいという典型だ。(神)

05/6/24