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球場の清掃も練習の一環だ!――ソフトボール指導者のシニア阿部さん――競技者の「精神改革」も  指導書、事例集を4冊作成

6月25日(土)

 「球場の清掃も練習の一環」。ソフトボールを指導するなかで、競技者や父兄の精神改革も行われた――JICA日系社会シニア・ボランティアとして、二〇〇三年七月からソフトボールの技術指導に携わっていた阿部司さん(66)が二十九日に帰国する。ブラジル野球・ソフトボール連盟の要請でアチバイア日伯文化体育協会に赴任した。アチバイア以外にもベレンや、マリンガなど地方へ指導に行った。また、ポルトガル語による指導書、事例集など計四冊を作成し、ブラジル・ソフトボール界に貢献をした。
 「ソフトボールが昔から好きだった」という阿部さん。私立高等学校の非常勤講師をしていた時、グランドでソフトボールを指導している監督の姿を見て「これだ」と思ったそう。以降、独学で指導法やルールなどを学び、日本ソフトボール協会第一種公認審判員、第一種記録員の資格を取得した。
 指導要件に挙げられていた「青少年の健全な育成」に関して、阿部さんは団体競技であるソフトボールを通して協調精神が培われると考える。指導するに当たって「日本のように厳しく練習させた」という。ブラジルではほとんど子供に掃除をさせないが、敢えて、グランドの掃除をさせた。「自分が練習する場所なんだから綺麗にするのは当たり前」と指導し、精神論から変えていった。「これも練習の一環だと理解してくれるまで一年かかった」と振り返る。
 また、子供たちの非行防止、肥満防止、そしてチーム強化のために夏休み中の合宿練習を提案したことも。しかし、「休みは楽しむもの」というブラジル人の考えに反するため、多数の反対意見が出たそう。その中でも数名の賛同者とその子供たちと合宿を実行した。
 合宿の目的は親と子のコミュニケーションをよくすること。そのためにどのような共通練習が必要か検討したところ、約三十年前、静岡県三島市沖ヨガ道場で体験した強化体操を思い出した。「経験したことのないことばかりだったようで、辛くても楽しかったようです」と言うように、大変評判がよかったそう。そこで「他チームの参考にもなれば」と教材を作成した。
 「言葉が通じればもっと子供たちが上達できたと思う」。思うように意志伝達ができず、悔しい思いをしたこともあった。そこで考えたのがポルトガル語での指導書作成。事例集、ルールなどの他にも投手のための指導書を作成した。
 指導書の専門語や表現のチェックはこれらに精通した沢里オリビオ栄志パウリスタ野球連盟会長、辻修平アチバイア日伯文化体育協会会長に頼んだ。翻訳作業はJICAの全面的な協力によるもの。「これらの人々はもちろん、二年間協力してくれたすべての人に本当に感謝している」と話した。
 沢里会長は「ブラジルのソフトボールの歴史は浅い。だから、阿部さんが来て、指導書を作成してくれてよかった」と感謝の意を表した。阿部さんは、「ブラジル人は素質が凄い。技術を習得すればもっと強くなる」と評価し、「これらの指導書が技術向上の助けとなって、ブラジルチームに役立ってもらえれば嬉しい」と述べた。