6月29日(水)
【ヴェージャ誌一九〇九号】緑の党(PV)の下議で作家のフェルナンド・ガベイラ氏は「労働者党(PT)は死んだ」という。同氏は往年のMR8ゲリラのメンバーで、米国のエルブリック大使拉致にも関与した。ルーラ大統領は、同志を裏切った偽善者だと同氏が断罪した。下院へ自転車で登院する人気者だったが、最近バイクに交換した。青年時代に感銘したサルトルの実存主義は、同氏の座右銘である。
以下は同氏との一問一答。
【最近の著書にある、「ルーラ大統領の誕生は歴史の過ち」とはどんな意味か】ルーラ氏が初めて大統領選に立候補した時ベルリンの壁が落ち、世界は社会主義の終焉時代に入った。そうした背景の中、ルーラ氏の立候補は何を意味するか。工員が頂点を極めたことは象徴的意義があるが、同時に目覚めの悪いマルクス主義者の夢に過ぎないとも言える。世界的傾向から見れば、大統領も私も半拍子遅れているのだ。ルーラ大統領は、鬼の首を取ったように何かを勘違いしている。
【何を勘違いしたか】ルーラ政権の誕生で、社会が改善されると思ったこと。以前よりも多い所得を得られると思ったことなどが勘違いだ。数々の公約を売り物に政権を得たが、国民にとっては論争の種をまかれるだけになっている。
【PTが脱線したのは、いつか】大統領選で当選を期するための資金カンパからPTの脱線が始まった。テレビでは広報に力を入れ誇大宣伝と衝動的なキャッチフレーズのマーケティング手法を取り入れ、本来の路線から離れた。
PTは、もはや政治ではなく営業へ活動を転換した。現実離れしたプログラムをマスコミに流した。PTが政権を獲得すれば、全て実現可能という幻想を党員に植え付けた。
【あなたも党綱領の草案者だが、PTを信じたか】党設立時は絶大な民衆の支持があり、ブラジルを変革できると信じた。訪れる全ての場所で、民衆から歓呼の声で迎えられた。
しかし、ルーラ大統領を担ぐ一派に裏切られた。いざ蓋を開けてみると、プロジェクトが杜撰なのだ。国家レベルの計画がない。あるのは国家権力の維持だけだった。現在の政治危機がそれを物語る。
【政治危機から、どんな未来が展望できるか】PT理論は、レーニンが二十世紀初頭に唱えた中央集権を土台とする民主主義に立脚している。それがエレーナ上議の追放につながった。しかし、現在は二十一世紀である。
二十一世紀では追放劇は終わった。しかしPTの中央集権はプラナウト宮に密室政治を生んだ。国民は、期待したPTが存在しないことに気付き始めた。
【どうして気付き始めたか】野党だったときが本当のPTであった。与党になり、どこにでもある普通の党に変身した。一人の貧しい女がいたとする。彼女は村を出て街へ行くと、売春婦になった。次に売春宿を経営した。彼女は金を儲けて錦を飾った。彼女の夢は世界を売春宿で満たすことだった。PTはカネさえあれば、ブラジル民主運動党(PMDB)も連立与党も不要であると、国民は気付いた。
【それは政治システムの欠陥ではないか】政治システムは一部に過ぎない。PTもPSDB(ブラジル社会民主党)も中道左派で、思想的には似ている。議員数でも安定政権を構成できるが、連立はできない。両党は生理的にウマが合わないからだ。PTは、前大統領を前時代派の領袖と見ている。