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パラナ老人福祉=和順会30周年=創設の初心忘れず=来賓ら施設の充実称賛

6月29日(水)

 彼らのためでなく、彼らとともに──。パラナ老人福祉和順会(佐々木陽明理事長)の創立三十周年記念式典が二十六日に、パラナ州マリンガ市の同施設であり、同州内外から五百人以上が祝福に訪れた。日本から、浄土宗関係者十九人が来伯。二十五日午前、入所者のために授戒会を行い、戒名をおくった。独居老人や生活困窮者を無料で受け入れている和順会。入所者と共生するのが福祉の基本だという、亡き長谷川良信氏(浄土宗南米開教初代総監)の教えを確認し合った。
 同じ敷地内にある日伯寺本堂で、まず先没者追悼法要が営まれた。本堂に入れ切れないほど参列者が集まり、僧侶が読経する中、焼香した。
 この後、場所をサロンに移して式典が開かれた。佐々木陽明理事長は「二百四十六人の発起人で、和順会は立ち上げられた。貧困者や一人で生活できない人を全員、無料で世話させていただいています。日系人農家や商社を始め、州政府や総領事館、JICAなど多くの人の支援のおかげ。この三十年間に、二百人以上の最期を看取った」とこれまでの歴史を簡単に説明。
 「『彼らのためにするのではなく、彼らと共にする』という長谷川先生の言葉を守ってがんばりたい」と初心を貫くことを誓った。
 萩生田浩次クリチーバ総領事は「三十年と言っても関係者にとって、平坦ではなかったはず。三十年前、北パラナは、天候異変でコーヒー産業が壊滅した。その直後のことで、言葉に尽くせない苦労があったと思う」と労をねぎらった。
 慶祝団団長の松本真岳浄土宗社会国際局長は「老人ホームの設備がよく整っていることに、びっくりした。浄土宗もささやかながら、寄付をしたことがあります。これからも発展をとげていくことを期待しています」と祝辞を述べた。
 西森ルイス弘志州議(パラナ文化運動連盟理事長)は「和順会は身寄りのないお年寄りを対象にしています。日系、ブラジル社会に貢献し、模範の施設になっています。これも役員などの力があったからこそ出来たもの」と賛辞を送った。
 シルビオ・バーロス・マリンガ市長は「日本語がしゃべれないので、ポルトガル語で話します」と日本語で切り出して会場を沸かせた。「先日、訪日した。日本では両親や先祖を大切にするという話を聞いたのが、印象的だった。高齢者に敬意を表すという精神が、和順会で活かされていると思う」と、施設が同市にあることを誇らしげに語った。
 この後、クリチーバ総領事館、JICA、州議会といった十の団体などに感謝状が贈られた。老人福祉に貢献があったとして、佐々木陽明理事長がパラナ州名誉州民権(証)を受け、贈呈式も合わせて行われた。最後に中庭で入所者らがケーキをカットし、祝賀会に移った。
 記念式典には、石橋隆介JICAサンパウロ支所次長、尾西貞夫援協第一副会長(兵庫県人会会長)、リカルド・バーロス連邦議員、ホソカワ・マリオ市議、ルイス・ローレンソ・コカマール農協理事長など多くの来賓が訪れた。