7月1日(金)
世界最高のクラッシコ(伝統戦)に世界中が熱狂――。コンフェデ杯の決勝でブラジルは二十九日、アルゼンチンと対戦しアドリアーノらのゴールで四対一で快勝、一九九七年以来二度目の優勝を決めた。
W杯開催地が大会前年の「予行演習」として行う同大会。当初、ブラジル国内では単なるメンバー選考の場、程度の位置付けだったが相手が宿敵アルゼンチンとなれば、話は別。
南米の二大巨人の底知れぬライヴァル意識を表すこんなエピソードがある。
ブラジルサッカー連盟の記録によれば、自国の三十三勝三十三敗二十二分けとなるクラッシコの歴史が、アルゼンチンサッカー協会に言わせると逆に自国の三十七勝三十三敗二十二分けとなる。引き分けの数だけは両者とも一致するというのが笑えるが、どちらもまだ曖昧だった一九〇〇年代前半の結果を有利に解釈するため、こんな数字になる訳だ。
魏、蜀、呉が覇権を競った三国時代の中国のように、それぞれに存在する「正史」――。世界最高峰の選手を抱える両者が、初めて国際サッカー連盟が主催する世界大会の決勝で対峙したこの一戦は、来年の本大会でも見られないような豪華な一戦だ。
ブラジルはエース、ロナウドやロベルト・カルロス、カフーを、アルゼンチンは先日のW杯予選で圧勝した立役者のクレスポらをそれぞれ欠くベストからは遠い陣容。世界最優秀選手のロナウジーニョやカカー、ロビーニョら攻撃の選手でアルゼンチンを上回るブラジルは前半一一分、今大会絶好調のアドリアーノが強烈なミドルシュートを叩き込み、先制。さらに五分後にはロビーニョのパスを受けたカカーが技ありのシュートを決め、ブラジルが主導権を握る。
現代サッカーの「心臓」である中盤のレギュラー二人をリベルタドーレス杯のために欠く上、準決勝からの試合間隔がブラジルより一日少ないアルゼンチンは精神的にも肉体的にも終始、ブラジルに圧倒されたまま。後半開始早々には、右サイドバック、シシーニョが好プレーからロナウジーニョに絶妙のパスを送り、追加点。さらに後半一八分にもアドリアーノがだめ押しのゴールを奪った。アルゼンチンもアイマールの一点にとどまった。
どちらが強いのか――。永遠に答えの出ない命題を巡って争う両雄。ブラジルにとっては一の勝ち越しとなるこの日の勝利も、単なる通過点にしか過ぎない。