ドブネズミが大引越し=白昼でも民家に出没=チエテ川工事で巣を失う=水害緩和する意外な長所も
7月1日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日、ヴェージャ・サンパウロ誌二十九日】サンパウロ市内チエテ川周辺の民家、商店や事務所では、ネズミの大量侵入で音を上げている。チエテ川修復工事で土手が削られ、コンクリートで固められたことでネズミの巣が破壊され、行き場を失ったネズミらが集団移動をしたとみられている。パリ区やカーザ・ベルデ区では猫の大きさのドブネズミが白昼でも姿を現わし、住民を恐怖に陥れている。疫害駆除機関には注文が殺到。いっぽうで市当局はサンパウロ市内のネズミ排除に初めて着手すべく、ネズミ博士の異名を持つ生物学者に業務を託した。
二〇〇三年に始まったチエテ川修復工事が今年に入り、土手の切り崩しによる拡張とコンクリート固めに入ったことで、従来の排水溝が取り除かれた。これによりこの排水溝を根城としていたネズミらが集団移動したと推定されている。
被害にあっているのはチエテ川周辺のパリ区などで、疫病駆除局はこれまで週二、三件の出動要請がここにきて六、七件と急増した。中には殺したり追払っても効果が上がらず、閉店を余儀なくされた商店や裁縫工場も出てきた。カーザ・ベルデ区では白昼でも排水溝から出て民家の窓から堂々と押し入るネズミも見られ、住民らは何匹殺したか計算できない程だとボヤいている。
住民が恐れているのは家具の破壊はもとより、疫病の感染にある。ネズミは五十五種類の病原菌の媒体となり、なかでもレプトスピローゼやペスト菌は直接、間接感染で死に至る。サンパウロ市内で昨年二百七十四人がレプトスピローゼに感染し、四十人が死亡した。今年五月までには百二十六人が感染し九人が死亡している。 サンパウロ市苦情局には昨年、二万本の電話通報があり、都心部のセー区では毎月一千五百本のネズミ退治要請があった。これを受けてセー区長は、通称ネズミ博士のアンジェロ・ボジオ氏にネズミ撲滅の業務を委託した。
同博士は三十年間、メトロ路線内のネズミの巣の発見と駆除に従事してきた。ネズミがメトロの電線や装置を喰いちぎるのを防止するためだ。博士によると、原因不明の火災の四五%、同じく停電の三一%、電話不通の二〇%が、ネズミが電線をかじったために発生した。
ネズミを駆除するには水、食物、巣の三つのうち、一つを断つことだと言う。このためセー広場を中心として清掃を徹底し、食物を断つことから始める。とくにカメローと呼ばれる屋台の食べ物のカスが残らないようにするのが急務だという。さらに二十グラム入りの殺鼡剤を地域全体に配布する。
サンパウロ市動物管理局によると、市内には一億六千万匹のネズミがおり、人口一人当たり十五匹となっている。スイスでは〇・五匹、アメリカでは二匹となっているが、ニューヨークでは七匹となっている。
博士はあくまでも数字の上の統計でサンパウロ市内の実数は数倍に上ると見ている。一組の夫婦ネズミで一年間に二百匹の子を生むからだ。成熟すると体長は五〇センチ、体重は一キロを超える。ネズミ集団には数々のオキテがあり、その一つは食べ物の試食にある。変わった食べ物があると、集団の中の病弱なものや、老いたネズミが試食して異質がないか確かめる。壮健な若者が生き長らえ、集団を維持していくためだと博士は言う。
さらに、ネズミは排水溝やドブの中に通路を作るため、水はけを良くする仕事もしていると評価する。ネズミを撲滅したら、サンパウロ市の排水溝はまたたく間に詰まって、今よりもっとひどい水害に見舞われるという。ネズミの撲滅は現実的に無理だとした上で、路上に出ないような環境を作り、ドブに閉めこむ算段をすることだと強調している。