7月6日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六月十九日】大衆迎合主義が大手を振っていたブラジルの政治に異変が起きている。厳格な経済政策が、次回大統領選挙のテーマになりそうだ。ベルナルド予算管理相はデルフィン元予算管理相の進言に従い、基本収支の赤字をゼロにすると宣言した。
政府は財政黒字を国内総生産(GDP)の四・二五%に設定するか、税収を年九〇〇億レアルに絞り上げると宣言している。そして公共債務を少しずつ償却しながら、放漫財政から脱却するとしている。
苦心の末、財務相は財政黒字を生み出しているが、一七〇〇億レアルに達する支払い金利を捻出するに至っていない。不足分を債務へ繰り延べするので財政黒字を出しているのに関わらず、公共債務はジワジワと増え続けている。
基本収支の赤字ゼロとは、金利支払いのための基本収支の黒字倍増を意味する。債務の増加に歯止めがかかれば、ブラジルは常識を回復し、収入内でやりくりするようになるのだ。
財政黒字で債務の金利が払えれば、経済の歯車が回るだけのGDPが産出できるようになる。支出に見合うだけの収入が得られるようになったダメ親父の家計みたいなもの。
現行の基本金利一九・七五%を一〇%に引き下げ、年間金利支払い額を八〇〇億レアルに縮小できれば、現在の財政黒字で、基本収支赤字のゼロは可能である。
ルーラ大統領も、インフレ対策が金利政策に偏重したことをやっと認めた。中央銀行の通貨政策は、ブレーキを掛け放しで荷物を満載し山登りをするようなものだった。まだ猛スピードで走れというのだ。
インフレ問題を脇に置き、金利を引き下げれば基本収支の赤字ゼロは可能だ。財政収支を中心に舵を取れば、通貨政策や投資促進、経済成長、雇用促進などを解決したうえ、インフレも沈静できる。政府の垂れ流し経費を抑えた均衡財政が、PT政権の救命具といえそうだ。
PT政権が採用した古典経済学は、ルーラ政権の経済基盤を揺るがした。おまけに、結果として汚職のまん延を許した。金利の過重負担でインフラ投資も出来ず、生産の基礎である電力供給にも支障を来たしかねない。それが大統領選の前夜に起きようとしている。