ホーム | 日系社会ニュース | ――アルバレス・マッシャード第85回招魂祭――=先達の慰霊、将来も絶やさず=日本人墓地に各地から600人 沖田領事「日本の精神が残っている」

――アルバレス・マッシャード第85回招魂祭――=先達の慰霊、将来も絶やさず=日本人墓地に各地から600人 沖田領事「日本の精神が残っている」

7月12日(火)

 「今まで一度も雨が降ったことがない。これも先没者の魂のおかげ」と言われるアルバレス・マッシャードの招魂祭は、十日、八十五回目を迎えた。午前九時から同地日本人墓地で法要が行われ、先没者を追悼するために各地から約六百人が墓地を訪れた。
 プレジデンテ・プルデンテ西本願寺の孫田信良さんが導師を努める中、松本一成同地日伯文化協会会長をはじめ、勝谷孝ルイス同市長、沖田豊穂在サンパウロ日本国領事、船田佳幸汎ソロカバナ日伯連合文化協会会長などが参加した。
 始めに同地では既に一人となった戦前移民の和田光喜さん(76)が「古い歴史を持つこの地で、開拓精神を忘れることなく、後継者としてこれからも尽力したい。先没者のご冥福をお祈り申し上げる」と、追悼の辞を述べた。沖田領事は「ここには日本の精神のいいものが残っていることを確信しました。百年祭の時には是非お手伝いしたい」と話した。
 現在、南米唯一と言われる同日本人墓地には、開拓当事一九一八年から一九四三年までの短期間に、死亡した七百八十四名が埋葬されている。その内、約三百人が幼い子ども。同地の人々は「食べ物ない、薬ない、医者もない、本当大変だったんだよ」と話す。
「最盛期には約二千家族いたのも、今ではもう百五十家族」と話す松本会長は十九歳の時に来たという。「若いときは招魂祭にあんまり興味なかったけど、今ではやっぱり残していかんとだめだと思う。これからは二世が中心になって支えていって欲しい」と述べた。
 妻のエミーリャさん(66)の父は同地五十年史『拓魂』の著者。「よく父からは昔の話聞いとった。入植当初はプルデンテまで死体埋葬しに行って、帰ってきたらまた誰か死んでたそうです」と思い出す。
 「先輩、家内の兄弟が埋(い)かっとる」と言うのは、二世の市岡正さん(76)。五十年近く招魂祭に訪れているという。「日本人がガランチードと言われるのは先輩のおかげよ、本当にありがたいことだよ。だから恩返ししたくて来てる」と感謝を表した。また、同地開拓ピオネイロの小笠原尚衛さんの親族に当たる洋一さん(75)は、「パパイらのために、ここで生まれた時からずっとお参りしています」と話す。
 午後からは、婦人部(溝部民美子部長)らが前日から準備した昼食会が行われた。また、同地チームが優勝した一九五五年の全伯野球大会から五十周年を記念して、当時の選手に記念品が贈呈された。サンパウロから訪れた北村章さん(79)は「五十年ぶりに再会する人もいて、本当に懐かしい」と話す。その他には、恒例の奉納演芸会が行われ、太鼓や歌などが披露された。
 最後には「今日来れなかった親戚のためにも」と、全ての墓にろうそくの火を灯した。「火をつけると不思議と風が止んで最後まで燃え続ける。先祖の方の力だと言われてるんよ」。この日訪れた人々は感慨深げに墓を見つめていた。