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拷問の前に英雄なし=生涯背負う後ろめたさ=前鉱動相が回顧録刊行=武力で軍事政権の打倒企て

7月13日(水)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙六月二十六日】ジウマ・ロウセフ前鉱動相(57)は軍政時代、パルマレス革命戦線のメンバーとして外国で実戦訓練を受けた。武力闘争による軍事政権の打倒を企てた点で、ジルセウ前官房長官と同じ道をたどった。同相は、著書「武器を取った女たち」をグローボ出版から刊行する。ベロ・オリゾンテ市とリオデジャネイロ市の秘密基地に志願者が集合し、実戦訓練を受けるため密かに出国した。外交関係を保持するため、行き先は現在も極秘となっている。
 共に出国した三人は帰国後、逮捕された。そのうち二人は拷問で死んだ。遺児の一人がニウマリオ・ミランダ人権相である。もう一人の犠牲者フェリッペ氏は、偽名のため身元が不明。前鉱動相への尋問では、政治警察の凄惨な拷問を受け、度重なる陵辱を受けた。
 尋問の焦点は、アデマール・デ・バーロス氏の金庫にあった二四〇万ドルの現金をパルマレスが強奪した事件であった。同相は強奪事件に直接関与はしていないが、計画の準備と後始末を行った。
 ゲリラにとって頭痛の種は、武器の隠し場所だった。帰国した前鉱動相は、サンパウロ市セウソ・ガルシア大通りの貧民街に同志と住んでいた。武器もそこに隠した。同相は一九七〇年一月十六日、ここで逮捕された。
 街で同志と出会うと、必ず隠語で会話をする。前鉱動相はバールにいた同志に出会い、バールへ近づいた。同志は背後にサツがいると手話で知らせたが、同相には察しがつかなかった。その時背後から羽交い絞めにされ、連行された。
 人間は拷問に弱く、誰でも限界状況に追い込まれる。転向を強制されて転ぶが、それを批判する権利は誰にもない。拷問を受ける前に転ぶ人や自分を偽ったことを恥じて自殺する人もいる。拷問は人間の心を奪い、全てのキレイゴトを否定し、裸の人間にする。
 拷問から生き残っても、後ろめたさという十字架を生涯背負う。拷問で落命した同志に対し、生きていることの屈辱と敗北の責めにさいなまれる。拷問の前に、英雄はいない。全ての人間は卑怯な意気地なしなのだと、前鉱動相は拷問を通して悟ったという。