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輸入価格ごまかし脱税=「国民の目をそらすため」と顧客

7月15日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】サンパウロ州連警はサンパウロ市内で十三日、ブランド品や高級品を販売するショッピングセンター、ダスルのエリアーナ社長を脱税などの容疑で逮捕した。このほか弟で共同経営者の重役と経理担当重役も同時に逮捕された。さらに逃亡中のもう一人の重役を指名手配した。
 連警は二百五十人の捜査員と国税局監督官八十人を動員し州内三十三カ所、州内三カ所で家宅捜索を行い、証拠物件を押収した。証拠物件が押収されたことで、証拠隠とくの心配はないとする弁護士の要請が聞き入れられ、同社長は同夜、保釈された。残りの二人の重役は認められず、拘留されている。
 ダスルは同社長の唄い文句の「高級品の殿堂」を全面に打ち出して、六月にオリンピア区に新装開店したばかり。政財界や富裕階級が一度は訪れる店で、オープンの日は一万五千人が列席、アウキミンサンパウロ州知事夫妻がテープカットした。現在、登録顧客は四万五千人と言われている。それだけに今回の連携の強制捜査は驚きを持って注目されている。
 連警によると、容疑は脱税、公文書偽造、犯罪組織の結成などだが、中でも輸入品のアンダーインボイス(仕入れ価格を安く表記して税金をごまかす)が大がかりに行われている疑いがあるという。事の発端は、輸入コンテナーの中に申告されていない高級ブランドグッチの製品が入っていたことで、しかも単価は十五ドルだった。
 このブランド品はサンパウロ市内で最低七〇〇〇レアルで販売されている。輸入の仕組はメーカーが正規の値段でマイアミの会社に売り、マイアミの会社が書類を作り変えて単価十五ドルでブラジルの輸入業者に商品送り状(インボイス)を発行する。ブラジルの税関では関税、工業税、流通税を十五ドルに対して支払えば良いことになり、コストが安くなる。これによってダスルは利益をあげ、裏面帳簿からマイアミの会社に支払っていたと、連警ではみている。
 同社の顧客の間では、国会でのスキャンダルが表面化したことで、国民の目をそらすために連警が行動を取っているとの見方をしている。確かに連警はビール会社のスキンカリオルを始め、これまで四十社にメスを入れている。目新しいところでは労働者党(PT)役員と自由戦線党(PFL)下議の現金輸送があるが、いずれも証拠不十分で不起訴となった。ダスルの弁護士は、世間の噂はともかく同社の潔白を証明すると明言している。
 同社ビルに隣接するファベラ・フィンシャルの住人で、昨年の刑務所ミスコンで優勝した女性の弟は「貧乏人の姉が釈放されて、大金持ちが逮捕されるとは一世代前では考えられないことだった」と笑っていた。