7月20日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六月二十七日】ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・フェインマン博士が一九四九年に発表したナノテクノロジー〔超極小単位の技術〕は珍しいものではないが、ブラジルではほとんど知られていない。ナノテクノロジーは現在、研究ばかりでなくビジネスの世界にも進出した。
サンパウロ市で七月六日、ナノテク・エスポ二〇〇五国際会議が開催された。一ナノメートルは、十億分の一メートルで、水素分子が十個並んだ大きさだ。人体の血液中にあるヘモグロビンの大きさが、二千五百ナノメートルある。
放射性物質や化学物質で構成されるこのヘモグロビンが腫瘍やウイルスに変化して細胞を冒したりする。数々の謎を解くため一ナノから百ナノメートルの極小世界が今、学会で注目されている。
事務用に使用されている紙は、厚さが十万ナノメートルある。これをナノメートルで測る厚さに圧縮できると、医療や薬剤、農業、工業、商業など広い分野で用途が生まれる。
日本や欧米では二〇〇四年、ナノテク産業育成のため七五〇億ドルが投じられた。中国やインドでも関心を持ち、研究参加に挑んでいる。ブラジルでは大学などがようやく動き始めたが、これまでツンボ桟敷にいたハンディが問題である。
ブラジルはナノテクを活用し、いかにビジネスに結びつけるかの基礎から学ばねばならない。理論は難しくないが、ビジネスにつなげるのが難しい。要するにブラジルは、意識改革から始めねばならない。
ナノテクで物事の基準が変わるので、目的と素材、原料、方法、加工など従来の概念が全て変わる。研究は、企業の注文によって行われる。欧米の自動車メーカーは、ナノテクにより洗車不要の乗用車を発表する予定だ。釘やナイフでこすっても、傷が付かない自動車も発表される。
人骨代替用で拒否反応が起きない生物ダイアモンドも研究中だ。熱を持たないPCモニターもお目見えする。地球と宇宙センターを結ぶ有線ケーブルも、ナノテクで開発中。ナノロープウエイ、ナノビタミン、即時筋肉に変化するナノタンパク質などが開発途上にある。
ブラジルは、インターネットやITを貪欲に取り入れた精神でナノテクに関心を持ったら、案外普及も速いのではないか。ナノテクは企業にとって幻想の花嫁ではない。起死回生を賭ける中小企業にとっては新しいビジネスチャンスだ。