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知的所有権廃止で報復?=問われるエイズ抑制剤の功罪

7月20日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙六月二十四日】労働者党(PT)の下議がNGO(非政府系団体)と保健省の協賛で行った政治活動が、民間企業による汗の結晶を無に帰そうとしている。民間企業は、外国市場の拡大とブラジルの米国向け輸出の振興に貢献しようとしていた。
 エイズ抑制剤に対する知的所有権の廃止法案が、下院で可決された。知的所有権よりも国民の生命が大切だとする考えが承認され、上院へ回された。同抑制剤を製造していた製薬会社は特許料を払う必要がなくなった。
 知的所有権については世界貿易機関(WTO)も重視しており、ブラジルの下院での承認を検討し始めた。外務省は国際法の順守を優先、勝手なことは許されないと下院をsけん制した。WTOは極貧国だけを例外として認めている。
 ブラジルはWTOにとって極貧国ではなく、世界の十五経済大国の一員なのだ。米政府は直ちに経済制裁の検討に入った。米紙はいっせいに対伯制裁阻止へ動いたが、PT議員の国際オンチを批判した。
 政府はエイズ抑制剤の特許を有するアボットとメルク、ギレンドの三社に,知的所有権の無効を通告した。ルーラ大統領は直後、南アフリカに赴きエイズ抑制剤の提供を申し出た。政府が率先して、エイズ抑制剤の海賊版を製造して輸出する計画を立てたのだ。
 米共和党の下議五人とカーラッチ前国防長官は、知的所有権の保護を米州自由貿易圏(FTAA)の対伯交渉案件に加えた。対伯貿易は免税の反面、報復のオマケがつくことになった。
 米案のゼロ関税は、ブラジルの輸出品の一〇%に適用され、免税額は二五億ドルに達する。その代償は海賊版の取り締まりだという。つまりPT議員による国際オンチの代価といえる。議員の国際オンチは、対米輸出企業の首を締め、輸出を困難にする。