2005年7月21日(木)
今年で三年目を迎えるYOSAKOIソーラン大会。各地日系団体がヨサコイを「芸能」として用いることも増え、じわじわと浸透しているようだ。どこか日本らしさを感じさせる振り付けや音楽と、それを自由にアレンジできるというとっつきやすさが若者を惹きつけるのであろう。「日系社会に若者を呼び戻し活性化したい」という大会趣旨は、次の世代を担う子どもたちにも伝わっているのだろうか。子どもたちのヨサコイを通して未来の日系の姿を考えたい。七月はじめの実行委員会の定期総会時点では、今年キッズ部門に参加する三チームの練習の進み具合はばらばらであった。始めたばかりの平成学院、冬休みに伴い練習も休みになっているビリチーバ・ミリン、そして合宿を組んで週末のみ練習をするというPL。三つのキッズチームの練習風景を追った。
「あと三回通して今日の練習はおしまいです」。
「ええー。あと一回!あと一回!」
鳴子をカチャカチャと振って、練習を減らそうと抗議する子どもたち。振り付けを教える平成学院の父兄、矢倉サンドラさんも負けずに声を張り上げる。「あと三回よ!」
『いつもの騒ぎ』といった様子で浜崎みゆき校長が音楽のCDをかける。前奏が始まった。
どうしたことか、子どもたちは渋々ではなく、条件反射のようにぱっと入場の列を作り、今度はリズムにあわせ鳴子を振って踊り出した。振り付けをすっかり覚えて楽しそうに踊る子、練習を見に来た母親に気を取られながら動く子、隣の友達のまねをしながらワンテンポ遅れる子、一つ一つの動きを激しく飛び跳ねるように踊る子。個性豊かに音楽に反応してしまう平成の鳴子キッズだ。
一昨年の第一回大会から連続出場している平成学院。今年の練習は学校が冬休みに入る七月から始まった。毎日三時間の練習をしている。練習期間が一カ月というのは、全参加チームの中でも短いほうに違いないがやる気は充分。参加を希望した四十三人の中には三年連続で踊る子供も少なくないという。「やっぱり踊りたい子が参加しているから休み中の練習でもみんなが来てくれる」と浜崎校長は笑顔で子供たちを見渡す。
教室には宝塚歌劇団の写真と説明や、坂本九の「上を向いて歩こう」の歌詞などが貼られている。「こういう面白そうなものでないと日本語への興味を持ってもらえないというのもあるけれど、日本語は日本文化を知らないと学べないと思うんです」。平成学院の教育方針だ。「ヨサコイを踊ることで日本に関連したものに参加している実感をもってもらいたい」と浜崎校長はヨサコイ参加の意義を話した。
「子供は飲み込みが早い」と振り付けを考えながら教える矢倉さんは汗をぬぐう。教えている最中に振りを変更してもすぐに順応する子供たち。大人ではこうはいかないだろう。
練習が終わっても、流れる音楽に合わせて鳴子の音が聞こえてくる。「自然に体が動くってうらやましいわねえ、何も考えてないでしょうにね」練習を待っていた母親たちが話す。
脅威のスピードで振り付けを覚えていく平成鳴子キッズ、遅れを取り戻せるか!? つづく(秋山郁美記者)