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英警察、ブラジル人労働者を射殺=職務質問もなく=伯外相、国際問題扱い要求=射撃正当化におののく出稼ぎ

2005年7月26日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】ブラジル人労働者に対する無差別射撃を正当化する英スコットランドヤード警察の見解にブラジル政府は二十四日、遺憾の意を表明した。英政府は犠牲者に対する哀悼の意を示し、射殺事件を特別に捜査すると約束したものの射殺は妥当とみなした、テロ対策は人権擁護を伴うべきなのに無差別射撃を禁じた部分を無視したとする声明をブラジル政府が発表した。訪英中のアモリン伯外相は二十五日、ストロウ英外相と会い、ジェアン・C・メネゼス氏の射殺事件について説明を受ける予定となっている。
 同警察は、職務質問も停止命令もなく、野原の兎を試し打ちするように背後から無防備の一市民であるブラジル人電気工を射殺したという。英国ではアングロ・サクソンか白人でなければ、テロリストの嫌疑を掛けられ、英政府が公式見解として無差別射撃を正当化したことがパニックを引き起こしている。
 ブラジル人出稼ぎは英政府の公式見解におののき、ブラジル政府の外交折衝を待っている。スコットランドヤードM15やM16(警察)は、確かな根拠に基づく行動をして欲しいと訴えた。今回の事件を見る限り職務質問の余地はあり、闇雲な発砲は軽率で英警察の信用を失墜したとした。
 英国就労に赴いたブラジル人出稼ぎの生活環境は、益々窮屈になっている。ブラジル人子弟に対する医療補助や学校教育は、特に深刻である。それでも米国への不法入国による出稼ぎよりは、まだ魅力らしい。EUに東欧十カ国が加盟して以来、ブラジル人不法入国者が急増し、どこの国でもトップを占めている。
 英政府は二〇〇四年以降、空港へ降り立つブラジル人の増加に目を光らせている。英国は、ブラジル人に限り査証前身元調査を在外公館に要求したが中止になった。英政府のブラジル人処遇は、人種偏見として国際法で訴える動きもあった。
 しかし、在英ブラジル人は増える一方で、ロンドンだけで十五万人と推定される。在伯英大使館に毎日、三百五十人のブラジル人が入国許可申請のため訪れている。英国の不法入国は、短期ビザで入国し、期限終了後も居座るケースが多い。期限後は偽パスポートを入手して永住する。
 ブラジル人労働者の射殺は、英国民の間でも賛否両論が拮抗している。英国のマスコミは、一斉に警察の越権行為をテーマに挙げた。世界の一流紙オブザーバーやサンディ・テレグラフ、サンディ・ミラー、伊紙カリエ・デル・セラ、西紙エル・パイス、米紙ニューヨーク・タイムズが、テロ対策という名の一般市民無差別射撃を取り上げた。
 ブラジル政府は、英政府の対応が伯英外交関係を軽視したものとして不信感を表明した。英外務省と英警視総監の声明は、以前からブラジル政府が表明していた無差別殺りくを禁じたテロ対策の見解を歪め、非戦闘市民を射殺した英警察を正当化したと、伯外務省をさらに刺激した。
 ブラジル政府はテロ撲滅には協力するものの、一人歩きを始めたテロ対策の真意がどこにあるのか、テロの真相を重視している。国連改革案の協議で日本やドイツ、インドなどのG4会議参加のため訪英中の伯外相は、ブラジル人の射殺事件を国際問題として扱うよう要求した。