2005年7月27日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】ブラジル政府が輸出で活路を見出そうと一縷の望みを抱いている世界貿易機関(WTO)は今、どうなっているのか。外務省のレポートから検証してみる。
WTOのスパチャイ専務理事は八日、農産物問題で空回りするG8先進国首脳会議を傍聴した。同専務はドーハ・ラウンドの主な途上国代表を招き、農産物に関してはエゴ丸出しの先進国への対処法を説明した。
香港で十二月開催予定のWTO閣僚会合は農産物問題の正念場になると、同専務が警告した。世界経済の活性化はG8首脳全員が認めるが、いつもアフリカが蚊帳の外に置かれた。今度はアフリカを主要議題とする目論見らしい。
ルーラ大統領も招かれたグレンイーグルズ・サミットでは、ブッシュ米大統領が二〇一〇年までに農産物補助金制度を廃止すると提案した。EU代表が難色を示し、日本を始めとするG8は農産物を封じ込める考えであった。農産物補助金廃止に前向きだったのは、英国だけのようだ。結局はアフリカ救済のG8宣言がまとめられた。
香港会合に向けたラウンド準備会議が近日、中国の大連で行われる。ブラジルを含めた三十一カ国が出席し、来る一年の貿易ルールを決める。最大の山場は、工業製品やサービスと同様に農産物にも市場開放を認めてもらうことだ。
ブラジル代表は農産物がラウンド成功の鍵であると主張、農産物抜きに世界経済は成立しないと強調した。世界銀行も、テロの温床となる所得格差や過激活動へ追い込む極貧解消のためブラジル案を支持した。
農産物に対する日本などの超高率関税が指摘されそうだ。EUは食糧安保の対象となる食品のみ超高率関税を容認するよう提案する。G20は農産物を含め全ての産物を五種類に分ける関税制度を提案する。
WTO加盟国の経済力に応じた税率案もある。先進国の最高税率を一〇〇%とし、途上国は一五%。細部はさらに検討が行われ、香港会議で決着をつける。出席する各国が経済閣僚全員を送り込む火花が散る会議となりそうだ。