2005年7月30日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】政治危機が経済へ暗い影を落とし始めたことでルーラ大統領は二十八日、リオ・グランデ・ド・スル州カノア市の石油精製所竣工式で、ブラジルの経済基盤が脆弱で予断を許さない状態にあり、気を緩めることはできないと初めて警告した。経済を後退させると、挽回するのに何年もかかる。不況克服は長期にわたり、場合によってはできないこともある。議会調査委員会(CPI)の活動は、経済に支障を来さない範囲に制限すべきだとした。
一週間前の楽観的見解とは打って変わり、ジェフェルソン下議によって引き起こされた政治危機を大統領が憂慮したのは、初めてである。ブラジル経済は八〇年代や九〇年代と同様に脆弱で、細心の注意を払う必要がある。ブラジルはいつも賭けるだけで結果が出ない。なぜか。歴代政権は数々の経済プランを掲げたが、単なるマジックに過ぎなかったからだと大統領は評価した。
大統領の式辞は、原稿がなかったので短かった。引き続きメイレーレス中央銀行総裁が、ブラジルの経済基盤は盤石であり政治危機が何ら影響を及ぼすことはないと、大統領とは反対の見解を述べた。
中銀総裁は楽観的見解を述べたものの、過重債務や政府の放漫支出、高金利など憂慮すべきことは山ほどある。公債総額九〇五〇億レアルは期限が短く、金利は高い。四五%は一年未満だ。債務が現在、国内総生産(GDP)の五〇・三%を占めている。
続いてペトロブラス石油公団のアゼヴェード新総裁は、同公団の石油精製量が二十七日、日産百八十七万五千バレルに達し、公団史上最高を記録したと発表した。リオ・グランデ・ド・スル州カノア精製所は、大統領の訪問に備え稼働力を五〇%アップし、日産二〇〇〇万リットルを三〇〇〇万リットルに引き上げた。
大統領は任期満了時には前政権と当政権の比較を行い、国民に示威するという。政府は技量不足という批判が多いことが極めて不快だとした。ブラジル経済は二〇〇三年、破綻状態のまま現政権に引き渡された。ここまで立て直したのは、労働者党(PT)政権のお陰だと自画自賛した。
全国工業連盟(CNI)のモンテイロ会長は、大統領へ政治危機に振り回されない経済の最低計画表の設定を進言する。特に政治危機が原因で起きる議会活動の停止と議案審議の停滞、無気力な官庁と無政府状態を避けるために市民活動を促進してゆく考えだ。
CNIは二十七日、企業家百五十人を招き、政治危機が引き起こす経済停滞について討議する。産業界は、政治危機の経済への感染と国民の無気力への発展を恐れている。経済停滞が生み出す、国民の無気力状態が最も恐ろしいという。
インフラ整備への投資が頓挫していることで、大統領府の官僚への風当たりが強い。議会でも投資基準案と税制改革案が棚ざらしになっている。上下水道整備案や零細小企業の減税案も、停止したままだ。ブラジル国民一億八千万人が、CPIに気を取られ、手が留守になっている。