2005年7月30日(土)
十七日まで開催された県連日本祭りにフェスティバルの歴史では初めて、日本から在日ブラジル人団体が参加した。出展していたのは、日本の在日ブラジル人企業で組織する「ABC JAPAO」(在日ブラジル人企業家協会)。三十人のスタッフが来伯し、在日ブラジル人コミュニティの現状を伝えた。移民記念館の設立、愛知万博参加など活発な活動を続ける同協会。三世の橋本秀吉代表(41)は「日本にブラジル文化センターを実現したい」と、その夢を語る。
ABC・JAPAOは二〇〇〇年、在日ブラジル人企業家有志によって設立された団体。イベントの開催をはじめ、ブラジル人のためのポルトガル語地図作成など、在日ブラジル人コミュニティに向けた活動を続けてきた。その一方で、国内に移民記念館を設立する運動を展開。群馬県大泉市、愛知県小牧市ですでに実現している。
今年三月には、日本人向けブラジル情報誌「made in brazil」を発行。五月には愛知万博に参加して、アマゾンの熱帯雨林保護の視点からブラジル日系人の森林農法(アグロフォレストリー)を紹介するなど、活動の範囲を広げつつある。
代表を務める橋本さんは八九年に訪日した。「日本の文化を勉強したかった」とそのきっかけを語る。「親が厳しくて、家の中では日本語だけでした。僕は反発して話さなかったから、日本に来た時はほとんど日本語を話せませんでしたよ」。
日本語学校に通った後、仕事の関係で全国をまわった。日本の文化に触れながら、在日ブラジル人コミュニティが直面する問題を知った。
同協会の設立以前にも、南米系の労働者を支援する組織に携わってきた。しかし「協力が少なくて」、どれも続かなかったという。
設立から四年。同協会が運営するインターネットサイト「Braznet」には現在、在日ブラジル人企業約千二百社が登録している。しかし、イベントで協力することはあっても、組織としてまとまるのはなかなか難しいのが現状のようだ。
「ブラジルの日本移民が百年近く経っても、ちゃんとした組織を作ることが難しい。在日ブラジル人コミュニティは二十年。まだまだです」。
今回の日本祭り参加にあたっては、在日ブラジル人企業家の活動を紹介する雑誌「Brasil-japao」を三万部用意。日本のブラジル人コミュニティの存在をアピールした。「今後は、ブラジルで成功した日系人の姿も取り上げていきたい」と抱負を語る。
在日ブラジル人が経営する企業は現在、千三百社近くに上ると見ている。国内にとどまらず、東南アジアなど海外で事業を展開する人も出てきた。その一方で、日本のブラジル人社会は今も様々な問題を抱えている。
ブラジル日本移民が百周年を迎える二〇〇八年。この年を在日ブラジル人にとっての「出稼ぎ二十周年」でもあるととらえる。
子弟の教育や日本語、医療問題の解決。それらと並んで掲げる目標が、日本におけるブラジル文化センターの建設だ。「日本人にブラジルのことを知らせたい。二〇〇八年までに実現できれば」と期待を込めた。