ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 裏帳簿で開き直る大統領=違法行為黙認に長い歴史

裏帳簿で開き直る大統領=違法行為黙認に長い歴史

2005年8月3日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙七月二十日】楽聖モーツアルトは一七九〇年、制作中のオペラ「コシ・ファン・ツッチ(女は信用できない)」を破り捨てた。現代も女性は二人の夫を求め、信用できない。一人はヒモ的夫、もう一人は旦那的夫。第一の夫は理想的夫だが、給料が安い。第二の夫は社会的地位が高く資産家で、何でも願いをかなえてくれる。
 第一の夫は、他人に抱かれて悶える妻のうめきを、歯をくいしばって聞かなければならない。第二の夫は情婦を多数抱え、女は玩具に過ぎない。これがコシ・ファン・ツッチの現代版といえそうだ。
 ソアレス労働者党(PT)前財務担当の場合、党への忠誠心を確かめる必要はない。前財務担当は裏金でPT議員に選挙資金を融通したのだ。大統領はPTの過ちを認めたが、その舌も乾かぬうちにブラジルで通常行われていることをしたまでだとうそぶいた。これもコシ・ファン・ツッチ。
 オペラのあらすじは、恋人の純潔を疑わない青年と現実主義の青年のどっちが正しいかを賭ける物語。二人の青年は偽って出征し、ある日変装して帰ってくる。二人は恋人を交換し、あなたの恋人は戦死したと告げる。恋人らはマンマとひっかかる。
 ルーラ大統領は、ヌケヌケと言った。選挙違反なんてブラジルでは日常茶飯事である。PTは一軍が政権中枢に就いたため、二軍を党の管理職に起用したのがまずかったというのだ。大統領の言っていることは、政治とはこのようなもの、裏帳簿がなくて政治なんかできるかとケツをまくったのだ。
 ブラジルには、致命的欠陥ともいえる、裏帳簿に基づく大規模な金融システムがある。PTがそれを知らないはずがない。マネロンとは反対に、きれいな金が汚い金になる。
 CPIが裏金融資をいかに扱うかだ。裏金帳簿とは偽装会計で、脱税の代表選手だ。アングラ経済と脱税の終焉を旗印とする政府が、先頭に立って違法行為をやっているのだ。ブラジルの政治では、裏帳簿の使用を大統領が看過しているのだ。
 ブラジルの違法行為黙認には、長い歴史がある。例えば為替のヤミ取引は、黙認ではなく奨励した。ブラジル人が海外旅行をする時は、携行ドルは一千ドルが上限とされた。それ以上必要なら、外国でドルを調達せよという達しだった。
 こんな状況下で企業は、ドル調達ができなければ窒息する。企業は裏帳簿か脱税をしなければ、ドル調達ができない。口をふさぎ鼻も詰め、呼吸ができない状態にして国税庁と連邦警察は非道な脱税取締りをする。スキンカリオールとダズルの手入れがいい例だ。
 オペラ「コシ・ファン・ツッチ」がハッピーエンドで終演したのは、二人が恋人を交換したからだ。ブラジルもハッピーエンドを迎えるために、政権政党を交換したらどうかという経済評論家セウソ・ミングの提案である。