アンデスを越えて太平洋への夢―。この壮大な夢物語であるブラジルからペルーへの大動脈となる道路建設が近く始まる。総延長2600キロ。このうち1000キロの工事入札がありブラジルの会社が5・5億ドルで落札の報道に白昼夢を見る思いで驚いた日系人は多い。計画では4年後には完成。そうなれば麻州やセラードの大豆などがトラックで運ばれアジアに繋がる▼もう20年近くにもなろうか。元外務大臣だった大来佐武郎氏が来聖し文協での講演で「アンデスに穴を開けろ」と語った。東大工学部の出身なのに財政の専門家に転じ、池田内閣の所得倍増計画の立案責任者だったし、経済への造詣は深い。この異色の人がブラジルの輸出振興にはアジア市場が見逃せないと説き、太平洋への窓を開けるべきだと力強く説得する。「アンデスに穴」の理論である▲あの頃はデ・ネット蔵相(下院議員)のアジアン・ポート構想もあり、この国の豊かな資源をアジアに輸出するの考え方が強かった。これは広大な海洋を活用するものだが、大来理論は道路や鉄道でアンデスを越えて海への計画である。ブラジルという大国を地図で見ると、東は海岸山脈があり西にはアンデス山脈が連綿と続く巨大な「盆地」と見ていい▼最大の輸出品である鉄鉱や内陸部で栽培される大豆も、この盆地から抜け出さないと海外には出せない。アクレ州の南部からペルーに通じる道路は、ブラジルと太平洋を結ぶ「大豆街道」であり、新しい交易の道なのである。 (遯)
05/08/04