2005年8月12日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】予算修正案を審議中の上院は十日、最低賃金二六〇レアルを三八四レアルへ引き上げる案を賛成三十票、反対二十七票で可決した。政治危機で与党が狼狽する中、野党に虚を衝かれた形となった。政府は新最低賃金を三〇〇レアルとする案を上程したが、議会で承認されず暫定令で処理していた。上院の決議は下院へ回されるが、下院が三〇〇レアルへ後戻りさせるか、大統領が拒否権を発動し調整なしの二六〇レアルに据え置くか予断を許さない。
汚職告発に始まった政治危機の収拾に気を取られ、与党は議会対策で油断をした。上院が可決した新最低賃金三八四レアルが、そのまま下院でも承認されると、国庫は年間一二〇億レアルの新たな支出を強いられる計算になる。
メルカダンテ上議(労働者党=PT)は、最賃修正案を可決しても国家財政は破綻させられないから、大統領は拒否権を発動するだろうと述べた。野党が与党の弱味に付け込み、大衆迎合主義を取り入れたと、同上議は非難した。野党は政局混乱を楽しんでいるというのだ。
政府は世論に逆らってまで、下院の説得は困難であると野党はみている。さらに、大統領の選挙公約「最低賃金はインフレプラス一〇〇%」を野党は持ち出すらしい。PT政権の成果が、インフレプラスわずか一〇・九%だったことも、野党は強調するようだ。
最低賃金のインフレプラス三八・一%修正案は、アントニオ・C・マガリャンエス上議(自由戦線党=PFL)から上程された。二〇〇五年五月の最賃調整は、インフレプラス七・八%であった。
政府は下院で、決着を付けようと考えている。政府は公共投資を犠牲にしたとしても、今回の最低賃金引き上げは飲めないとしている。下院でもしも敗地にまみえるなら、大統領は支持票を失ってもプライドまでは失いたくないと、調整なしで〇四年の二六〇レアルに引き戻す考えのようだ。
政府の失策はそれだけではなく、財政管理でも失敗した。予算修正案の承認で根回しを行ったが、土壇場で〇六年度予算管理の項目に手抜かりを発見した。議会経費の増額差し止めと国家公務員の給与調整差し止め、農業融資の期限延長差し止めなどで財務省の権限が制約されたのだ。
予算修正案の上程者マシャード下議(PT)は、政府と党執行部の指導に従わなかった。同下議はCPI(議会調査委員会)終了後、離党を宣言したPT独立派二十一人のメンバーである。同修正案は所得税法や社会保障法、農業融資法、予算法、最低賃金設定などの改正案を盛り込んだものであった。
上院における連立与党の敗北は、政治危機にブラジル社会民主党(PSDB)やPFLを巻き込もうとするPT戦略への報復とみられている。表決に先立ちPTは、野党の上議に政治取引の場を設けてきた。野党は、PTほどウソつきはいないと蹴った。ピメンタ上議(PT)が、CPIへ提出するリストにはPSDB所属議員の名前がズラリと並んでいたからだ。