2005年8月19日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】下院は十七日の議会で、上院で決議された、最低賃金を三八四レアルに引き上げる案を審議、表決した結果、賛成多数で同案を否決した。同時にこれを三〇〇レアルに制定した大統領暫定令を承認した。暫定令以前の二六〇レアルに戻ることも噂されたが、これにより本年度の最賃は三〇〇レアルに確定した。
もともと最賃はこれまで国会で最終決定がされておらず、暫定令で五月から実施されてきた。これを踏まえて上院では引き上げを決定した。与党筋では政局混乱に乗じ政府の虚を衝いたドサクサ紛れの決議と非難したが、上議らはインフレを加味した言葉通りの「最低」給料は三八四レアルになると主張、これはルーラ大統領の選挙の公約でもあり実行すべきだと反目した。
これに対し大統領は、最賃が三八四レアルに引き上げられると年内のみでも一七四億レアルの補正予算の計上が必至となり、現状では不可能との観点から、下院での否決を至上命令として下した。今回の下院での議決は通常の電光掲示板を使用した記名投票ではなく、挙手採決という原始的な議決となった。そのため多数決と発表されたが、得票数の発表には至っていない。
実はこれが今回の政府の作戦で、逃げ切り工作が功を奏した。このために大統領は事前にカヴァルカンテ下院議長を朝食に招待し、根回しを依頼するとともに、ワグネル法令担当相を議会に送りこんで野党の抱き込みを図った。これに同調した野党の協力により、挙手採決が取り上げられ、賛成多数となった。
抱き込みに応じた野党側は渡りに舟と、有利な予算の早期行使と補正予算の獲得のエサに食いついたと噂されているが、同相はこれらを否定。当然のことながら、賛成議員とひともん着起こした。ブラジル民主運動党(PMDB)の議員らは、挙手採決は否認議員が国民に名前を知られたくないための卑劣な手段だとした上で、貧困層の一縷の夢を断ち切った裏切り者だだと手厳しく非難した。
最賃三八四レアルへの引き上げに賛成したのは民主労働党(PDT)、社会大衆党(PPS)、自由戦線党(PFL)、党員の自由判断がブラジル社会民主党(PSDB)、自由党(PL)、ブラジル労働党(PTB)、PMDBの各党で、残りは否認に回った。
いっぽうで今回の否決については、安堵の色を浮かべている市が多い。全国都市自治体連盟によると三八四レアルの最賃になると全市の支出は二〇億七〇〇〇万レアルとなり、現行より一四億レアルの負担増になるという。
とくに北部や北東部では職員の六〇%以上が最賃であり、引き上げで市の財政はパンクするとしている。また全国の三百六十三市が人件費のみで支出の五四%を超えており、これが最賃引き上げで四百八十一市に増加するところだった。当然、市の支出を収入の二〇%に限定する支出最低規制法案にも違反することになる。