2005年8月24日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】ブラジルで人材発掘が話題となっている。人材の鍵は次の三つ。一、起業家精神。二、外国への適応性。三、異文化の克服。ブラジルの経済成長率はサッパリ、政界は負け犬どもが夢の跡だが、人材スカートがいまや国際レベルにある。サンパウロ市で八日、二つの人材発掘イベントCONARHとEXPORHが開催された。全く価値観が異なる民族雑居社会のブラジルで、いかに運命共同体を結成するかが問われた。ブラジルには有能な人材が多いようだ。
国際化時代の人材発掘では、さまざまな問題に遭遇する。アフリカへ進出したブラジル企業は、鉱山に就労する千五百人の現地人採用で前代未聞の事態に出くわした。アフリカでは族長の存在が重要だ。族長が人選を行い、就労を許可する。族長をコケにすると、会社はボイコットされる。
ブラジル企業は国際化の点で優れている。ブラジル文化がすでに国際的なのだ。多種民族によって形成される複雑多岐な文化を環境に育ったブラジル人は、先進国でも途上国でも、どんな環境にも容易に同化できる。
ヴァーレ社は五十三カ国に進出している。多くのブラジル人管理職が家族と離れ、全く文化の異なる社会で暮らしている。社員の給与体系も派遣先によって異なる。アフリカでは、エイズ保菌者か否かが需要な給与条件になる。
一夫多妻制の国では、家族手当や保健プラン制度が、ブラジルの習慣と大きく異なる。複数の正妻と複数の側妻の取り扱いが複雑で重要なのだ。間違えると大変なことになる。
サービス産業では、米系企業が先輩だ。儲かる会社経営の計数管理サービスが徹底している。矢次早に新しい経営戦略を打ち出してくる。電子マネー・システムで世界を席巻している。ブラジルで米系が次に狙っているのは、人材発掘と人事管理のようだ。
人材育成企業では、挑戦と目標達成が主眼。その練習のため海上沖合に出て、帆船で訓練を行う。目標と意欲向上、チームワーク、伝達能力、動機づけ、パーフォマンス、リーダーシップには格好の練習。
ボートレースもよい。企画や作戦、競争、風向き、ライバルの状態、チームの状態、リスク管理によい練習になる。スペースシアトルのシミュレーションも、人材育成企業が対応力や指導力、企画力、生産力、取引能力、団体行動、才能発掘の訓練に使っている。
数々の訓練設備が建設されているが、一方でストレスが昂じる弊害もあるという。訓練に耐えられないタイプの人がトラウマに悩まされている例もある。才能発掘や能力向上は本人の希望によるもので、強制するものではないらしい。
これから新しく注目される分野は、女性と健康に関するもの。女性の健康管理から全身美容やライフスタイルが最近特に注目されている。美容コンサルタントという職種も生まれた。
人材産業の新しい展望は、戦略と戦術ではなく新しい発想だという。ブラジルの競争力衰退の原因は、工業生産時代の古典経済理論と従来の習慣に止まっていたからだ。ブラジルの新時代に求められるのは、文化革新と旧態依然の慣習の改革。ブラジルの人材発掘がそれらの問題を解決するに違いない。
これからのブラジルは働いて給料を貰うスタイルから、考えて給料を貰うスタイルに変わる。先んじる者が命令し、常識型が命令に従う。物事を細分化し分析する手法は工業優先時代の考え方だ。サービスが製品より優先する時代は、それでは間に合わない。時代遅れなのだ。