2005年8月24日(水)
「実際、施設を回って見学してためになった」。サンパウロ日伯援護協会主催で、地区委員援協施設視察訪問が二十、二十一日の二日間行われた。同協会の管理下にある七つの施設を役員、地区委員約五十名が訪問。各施設で質問が飛び交い、熱心に話を聞く姿が見られた。
同企画は今年で五回目。今まで二回に分けて視察していたが、今回は一度に全施設を訪問することになった。最初に訪れたのは社会活動部・奄美事業所。ここでは子どもたちへの情操教育を行っている。内野和子本所長は「現在、六歳から十五歳の九十四人の子どもたちがいますが、日系人は一人もいない」と説明し「最近は御飯だけ食べに来る子もいる」と憂慮している。
今年創立十七年目になる日伯友好病院は現在、一日千人以上の患者を看ている。難産に対してスタッフを揃えており、死亡率はゼロだそう。「社会福祉事業にも携わっている」と大久保拓司院長。高齢者、貧しい人のために医師を雇い、無料で検査をしている。今年五月末からは人間ドックも始めた。
午後からは、ブラジル日系社会で唯一の精神を病む人たちの社会復帰施設であるやすらぎホームを訪れた。坂本盛男経営委員長の説明によると、ブラジリアやベレンから入居する人もいるそう。「今後は林の中に作業場を作り、そこに自宅から通えるようにしたい」と希望を述べた。リオデジャネイロから参加した牧田弘行地方委員は「リオでも病気になる人がいるから、早く入居すれば良くなることを知らせたい」と話した。
あけぼのホームの野村次郎経営委員長は、今後約五十人を収容できるシャレーの改造を計画中だという。「寒さという点も勘案して工事していかなければならない」と説明した。
次に訪れたカンポス・ド・ジョルドンにあるさくらホームでは満開となった桜を観、その後、同ホームの説明を受けた。菅野鉄夫経営委員長は「満開の桜とともに皆さんをお迎えできて光栄です」と挨拶。辻雄三元経営委員長は「もとは肺病結核患者の施設だったが、経営が成り立たなくなり、健康保養センターになった。まだ病人がいると思って入居をためらう人もいるようだが、現在、結核患者は一人もおらず老人ホームとなっている」と説明した。
二日目は、二〇〇二年に改築したイペランジャ・ホームを訪問。福島庄太郎ホーム長指導の下、二アルケール半の土地で無農薬野菜を栽培している。イペーの木やダリヤ、桜などもあり、自然に恵まれた環境だ。ここは比較的健康な人のための施設。福島さんは「一生懸命介護して、寝たきりになったから他の施設に移ってもらうのは寂しい。これからはそのような人も入居できるようにしていかないといけない」と話した。
最後の視察訪問先となったサントス厚生ホームでは、各婦人部などの協力で新年会、七夕祭りなどの年間定例行事を、また月間定例行事としては唱歌の練習などさまざまな企画を行っている。青木実経営委員長は「全ブラジルの施設と思ってください。地方からの入居もお待ちしております」と呼びかけている。
山下治さん(サンミゲル・アルカンジョ)は「施設のことは知っていたけど実際参加してみてよかった。でもやはり、入居費がブラジルとしてはどこも高いのが気がかりかな」と感想を漏らす。「どの施設も綺麗になっててびっくりした。私どもも、もっとアジューダしないかんなと思った」と話すのは地区委員を務めて十年目となる高須三郎さん(サンベルナルド・ド・カンポ)。参加者口々に「地区委員は説明しないといけないから参加した。来てためになった」と、充実した様子で話した。