2005年8月25日(木)
【サンタクルス発=堀江剛史記者】これから戦争です――。現在、テレビや新聞など各メディアにサンファン移住地出身の日系二世が登場、ボリビア国民の大きな関心を集めている。二十日、MNR党(民族革命運動・中道左派)の公認を受け、大統領選挙に出馬表明したサンタクルス在住の総合コンサルタント業、長谷倫明氏(45)。「この国を変えるのは今しかないと判断しました」。人当たりのいいその笑顔から決意がにじむ。十二月四日の大統領選に向け、選挙活動を行う長谷候補に二十三日、サンタクルス市内のレストランでインタビューを行った。
長谷氏の出身であるサンファン移住地入植五十周年式典が挙行された今月二十一日午前五時半、MNR党会議で長谷氏の大統領出馬が決定された。
千人の代表出席者のうち、賛成票九百六十九という圧倒的支持な支持を得て、ボリビア歴史上初の日系大統領候補が誕生した。
MNR党はヴィクトル・パス・エステンソロ氏が一九四二年に創設。長い歴史と厚い支持基盤、潤沢な政治資金を持つ党として知られ、国会で最大議席を抱える。奇しくも、時の大統領であった同氏が日本との移住協定を締結、サンファン移住へのきっかけを作っている。
「そのおかげで両親がボリビアに移住して、僕が(MNR党から)出馬した。面白い縁ですよね」
ボリビアの現在の政局は非常な混乱状態にある。ゴンザロ・サンチェス・デ・ロサーダ大統領がアメリカに亡命後就任したカルロス・メサ副大統領も今年六月に辞職。
現在、最高裁判所のエドアルド・ロドリゲス・デ・ベルセ裁判長が暫定大統領となっている。
「今のボリビアの政治は最低の状態にある」。
長谷氏は今月十二日に予定されていた県知事選に出馬、今月初旬に三二%のアンケート調査による支持を得て、最有力候補と見られていた。最終的な世論調査は、五一%――。
「あまり選挙運動をしていないのに関わらず、自動的に支持率が上がった。今のボリビアの流行語は〃CAMBIO(変革)〃ですよ」
今までにない新しい政治家を有権者は待望している、と見る。
そんな状況のなか、ロドリゲス暫定大統領が県知事選を延期、十二月の大統領選と同時に行うとの決定後、十以上の党から、大統領選出馬への打診があったという。
MNR党を選んだ理由に「歴史的な改革を成し遂げてきた党であり、経験も豊富。他党にはない組織力と資金力」を挙げる。
しかし、同党出身であるゴンザレス大統領の亡命などもあり、信頼が悪化したMNR党では数カ月をかけ、意識調査を実施。県知事に長谷氏を期待する声が最も多かったという結果を受け、党のイメージ刷新を図るため、日系人である長谷氏を担いだという経緯がある。
「『県知事選に残るべき』『とんでもない党だ』とか、周りの人から言われましたけど、党に力がないと選挙は勝てないし、変革は無理。大統領選では、党ではなく人間に票を投じるのでは」
来月六日に行われる立候補者登録に向け、現在党内部で副大統領の候補が検討されている。
他七党が候補を選出すると見られていることから、八候補で大統領の座が争われることになるようだ。
(つづく)