2005年8月26日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】老女の〃執念〃が軍警を動かし、麻薬犯罪組織員二十人の逮捕につながったという勇敢な美談がリオデジャネイロ市の話題となっている。
話題の主は同市南部コパカバーナ区のアパートに住むビトリアさん(80)。ビトリアさんは隣り合わせのファベーラ(スラム街)ラディラ・ドス・タバジャラで数年前から白昼の路上で麻薬売買や吸引を目の当たりにしてきた。
ファベーラ住民はもとより幼少年、外部からの中産階級と思しき子弟も混じっていた。また路上をピストルや機関銃を片手に我物顔でかっ歩する組織団も日常の光景だった。ビトリアさんはアパートの窓から怒鳴ったり、水をかけたりして警察に何度も訴えたが何の反応もなかった。
意を決した彼女は二〇〇二年以降、ビデオでこの光景を撮り続けた。撮影は〇四年まで二年間に及んだ。このテープを受け取った当局は、三カ月間にわたるファベーラ内の電話の通話記録とともに立件、逮捕状を取付けて二十人を逮捕した。うち二人は軍警で、情報提供と警備を担当していた。
ビデオ撮影のリスクに対しビトリアさんは、窓ガラスにフィルムを張って外部から見えないようにした上で、カーテンを閉めてカメラのレンズ大の穴をあけて撮影したと得意顔に語った。当局によると、老齢だから組織団は気にもとめなかった模様だが、さもなくばとっくの昔に死の制裁を受けていたと、彼女の粘り強い勇気に感服、市民の範たると賞讃している。
ビトリアさんは組織による報復の懸念があるため、家政婦をしながらためたお金で購入し、三十八年間住み慣れたアパートを売って郊外へ引っ越した。もちろん警護のため警官が監視している。