2005年8月26日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】ブラジルから海外への旅行客は年々増加しているが、とくに七月度の海外旅行はラッシュの様相を呈した。
中銀によると正規手続きを経て七月に持ち出された観光客の外貨は四億八五九〇万ドルとなり、これまで最高だった一九九八年度の月平均四億七七六〇万ドルを上回り、単月で史上最高を記録した。今年一月から七月までの累計は二五億七四〇〇万ドルで、九八年の年間最高記録五七億三二〇〇万ドルに肉迫している。
海外旅行ブームの第一の原因はドル安に起因している。今年に入ってもドル安は顕著に進み、七月までに七・六九%の下落となった。過去十二カ月間の累計では一八%のドル安となった。
国内の航空券の八〇%を発給し観光ツアーの一〇〇%を手掛けて、昨年三二億ドルを売り上げた国内旅行代理店協会によると、今年は一五%の伸びが期待されるという。しかしそれでも各航空会社の平均座席占有率は八一%となっており、超満員には至っていない。占有率は通常、六五%を超過すると良しとなっており、その点で採算は十分取れている勘定となる。
ドル相場は一九九五年のレアルプランで、一ドル=一レアル以下となる歴史上初の現象を見せたため海外旅行が隆盛を極め、九八年にはピークに達した。当時は国内旅行の経験はないが、海外旅行に出る人々が続出した。しかし当時とまではいかないまでも、ここ過去二年間で実質一レアルのドル下落となっている。航空業界では二〇〇一年アメリカで発生した同時多発テロ事件以来、利用客が激減したが、ブラジルでは今年に入り、事件以前のレベルを回復した。
さらにブームの原因としてブラジル人の経済力向上が挙げられる。とくに若手層は将来の計画性に富み、世界に目を向け始めたことで海外に出かけるのが一つのステータスとなっている。いっぽう、航空業界の熾烈な競争が、航空料金が年々下がることに拍車をかけている。例えば七〇年代にはニューヨーク行代金は三五〇〇ドル(現在値に換算)だったのが現在は六〇〇ドルから八〇〇ドルの間となっている。
またこれまでは学校の休暇を利用する人が多かったが、最近はこのラッシュを避け逆にシーズンオフを狙う人たちが増えている。この時期は全ての料金が割安で、サービスがいいからだ。また一般的に買い物目当ては姿を消し、目的地の文化を重視する傾向となっている。ブラジル人の人気旅行先はヨーロッパと依然変わりないが、最近はアメリカもまたぞろ人気が復活してきている。
外国人観光客がブラジルで落とす外貨と、ブラジル人が外国で費やすドルとの差額のいわゆる観光ドル収支は、一九九〇年から二〇〇二年まではブラジルからの出超(赤字)が累計二二五億五七〇〇万ドルだったが、二〇〇三年は二億一七〇〇万ドルにとどまり、昨年は逆転して三億五一〇〇万ドルの入超(黒字、つまり外国人が落としたドルが多かった)となった。これはルーラ大統領の重点政策の一つで、大統領は逆転劇に賞賛を惜しまなかった。しかし今年七カ月間の累計では四億ドルの赤字と、もとのもくあみとなった。