2005年8月27日(土)
ブラジル関連の著作や翻訳も数多く手がける京都外国語大学の田所清克教授(57)が同大の学生七人と大阪外国語大大学院の研究者を引率し、二十五日、来伯した。毎年、学生や社会人を連れて「ブラジル学の旅」と題した研修旅行を主催し、今回で三十回の節目。一方、教授自身の来伯も四十回に達した。
「机上で勉強ばかりしていても実際に触れてみないとわからない。何よりもこれからの学習のモチベーションが上がる」
研修旅行の目的を田所教授はそう説明する。
最近の学生たちは「大学にはっきりした目的がなく入ってくる学生が多いが、何かにはまるきっかけがあれば変わる」と話す。
これまで引率してきた教え子の中には、卒業後ブラジルに関わる仕事に就く者も少なくない。酒井康介さん(27)もその一人。
現在電子部品商社のブラジル支社長の酒井さんは「先生と一緒に来てブラジルにいろんな面があることを知った。先生の説明はガイドさんより詳しい」という。
今年の研修メンバーは全員が京都外国語大学の学生。安田尚美さん、渡辺純人さん、大南友美さん、北村亮さん、坂上貴信さん、冨田典子さん、柏木美保さん。 社会人や他学科の教授も参加することがある。今回は大阪外国語大学大学院の渡辺雅之さんが研究のため共に来伯した。
一行はパンタナール、マナウス、バイーア、リオデジャネイロ各地を巡り、九月七日に帰国する。
ブラジルの中ではサンパウロに興味があるという大南さんは「大学の授業で触れた日系社会に興味を持ち、是非実際に見てみたいと思っていました」と来伯の喜びを話す。
また、植物が好きだという北村さんは、「熱帯雨林破壊に関心があります。パンタナールに行くのが楽しみ」と抱負を語った。
田所教授のブラジル熱は半端ではない。日本人のブラジル移住八十周年にあたった一九八八年には、ブラジルの真の姿を一人でも多くの人に知ってもらおうと、自宅に「ブラジル文学資料館」(後に『ブラジル民族文化研究センター』と改称)を開設。センター内には、二十年間にわたって書店や古本屋で手に入れた様々なジャンルの文献約三万五千冊が展示され、中には「コロニア文学」も収められているという。
二〇〇八年の日本移民百周年について、「デカセギ子弟の教育問題を日本国内でもっと訴えたり、ブラジル自体への関心を高めるような活動をして、百年祭が終わった後、しりすぼまりしないように若い人たちを鼓舞したい」と話した。
専門は人類地理学を基盤としたブラジル学。多民族国家ブラジルを細やか、かつ総体的な視点からナショナリズムやアイデンティティを研究している。
今年中にカポエイラの歴史的背景や、なぜブラジルにこれほど根づいているのかなどについてまとめた本を出版する予定だ。
ブラジルが広大である分、田所教授の研究範囲も広い。