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「娘孫が日本にいるから」=「もう90歳、最後かなあ」=母国に先駆け投票開始

2005年9月1日(木)

 衆議院選挙の公示にともない八月三十一日から、世界各地の在外公館で日本より一足早く投票が始まった。国外最大の登録者を抱えるサンパウロ総領事館でも、昨年の参院選以来二度目となる公館投票を実施。初日、同館の入居するサンパウロ市パウリスタ通りのトップセンターには、午前九時半の受付開始前から有権者の長い列ができた。
 三十一日午前九時過ぎ、トップセンタービルの中二階に設けられた受付の前では、すでに約六十人の人たちが列を作っていた。サンパウロ市以外にも、ABCなど近郊都市やイビウナ市から来たという人もいた。
 受付がはじまると、一人一人がクラッシャーを受け取り、待合室となった映画館で必要書類を記入。職員の誘導のもと同ビル三階の投票所に向かった。
 投票「一番乗り」は、アチバイヤ市の佐藤平八さん(64)。七時半に家を出てきた。これまで四回の選挙は欠かさず投票しているという。
 「まだ使ってないのまで持ってきちゃいましたよ」と二つのパスポートを取り出した田中筆子さん(78)。七十二年前、六歳の時に家族で移住した。在外投票を「何となくうれしい」と語る。「娘や孫が日本にいますから。少しでも日本に良くなってほしいですよ」。
 九十歳を越えた有権者の姿もあった。
 九一歳の西谷敏雄さん。サンベルナルド市から足を運んだ。三度目の在外選挙。「長い間投票できなかったからね。でも、これでおしまいかな」。十六歳で移住してから七十五年。「国外に暮らす者から見ると、日本には、アメリカだけでなくもっと世界に目を向けてほしい」と語る。
 サント・アマーロ市から来た岡山笹雄さんは在伯七十五年。九十五歳の今もかくしゃくと、杖を片手に投票所から出てきた。「ブラジルから投票する気持ちは?」「ボンね」と笑う。
 サント・アンドレ市から訪れた大田信雄さん(73)、好子さん(68)夫妻。信雄さんは一九五七年に沖縄青年隊として移住した。「自分ら一世ですから、日本の政治には関心ありますよ」。この日は三歳の孫を連れてきた。「親が仕事だし、一人で家に置いておけないしね」。
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 この日訪れた人には前回選挙で公館投票を経験している人も多く、受付、待合室での手続きは比較的順調に進んでいた。
 受付の様子を視察した西林万寿夫総領事も、前任地ボストンの投票風景との違いに驚いた様子。「サンパウロだなと実感します」と言いつつも、「ミスの無いよう、百パーセント完璧にやりたい」と表情を引き締めた。
 しかし、前回の九日間と違って投票期間が四日間と短いこともあり、初日の混雑は予想以上。午前中は同ビル一階のエレベーター前からビルの入口まで百人近くの行列ができた。
 ピークは正午近くまで続き、二時間以上待った人も。進まない行列に不満を表わす人もあり、職員は対応に追われていた。
 午後になって混雑は多少緩和されたが、それでも午後二時現在で八十人近くが待合室にいたという。
 最終的にこの日投票に訪れた人は五百五十六人(午後四時半現在)。前回初日の二百七十人を大きく上回った。
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 ブラジル国内の在外公館投票はサンパウロ総領事館、ブラジリア大使館では三日まで、他の総領事館では二日まで実施される。