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選挙区投票の実現に期待=歯がゆい海外の有権者=近く最高裁判決=前参院選に立候補した高倉道男さんに聞く

2005年9月2日(金)

 自民と民主の政権選択や新党設立と盛り上がる今衆院選挙。その事情について、NHKの国際放送や邦字新聞、インターネットなどを通じて知りながら、海外暮らしの有権者は、中、小選挙区には投票できない。在外選挙もこれで五回目、歯がゆさが募る。昨年七月の参院選に在外邦人として初めて出馬したパラグアイ在住の高倉道男さんに思いを聞いた。
 12416票。「ミチオ高倉」の名で、比例代表に自民党公認候補として出馬、移住者の多いサンパウロやロサンゼルスでも遊説したが、獲得した得票数は同党の比例区で最下位。
 敗因について、「何より海外からの投票が少なかった。肩透かしを食らった感じだった」と振り返る。
 海外の有権者は七十二万ともされる。関心を高めるためには、「海外選挙区の設置が理想だが、最低でも選挙区に投票できないと」
 こうした思いはブラジルの有権者も一緒だ。
 「日本にいれば、新党を立ち上げた亀井さんの広島の選挙区がわたしの地元。応援したいんだけどね」。サンパウロ市の八十代男性は残念そうに語る。
 「多数の女性が立候補しているでしょう。興味があるのに」(同市、五十代女性)と悔しがる人も。
 現状ではまだ衆院小選挙区、参院選挙区には投票できない。その主な理由は二つある。海外では各候補者の主張を把握できない、先進国と途上国では情報量が違い不公平が生じる――。
 だが、そうした投票権の制限は違憲だとして、アメリカやイギリス、フィリピンに在住する邦人が国を訴えている。一、二審は敗訴したが、九年ぶりに最高裁判決が近く出る。
 言い渡しは九月十一日の日本の衆院選投票日の三日後だ。
 「国は認める方向じゃないか。いい結果が出ると期待している。もしダメでも運動は継続して欲しい」
 原告団のメンバーの中に、ブラジルなど南米在住者はいない。なぜだろう。
 「国を相手に訴訟とはおそれ多いこと」。初めこそ、在外選挙の実現を目指して「共闘」していたが、提訴の段階になって引き下がった経緯がある。
 「古い移住者と新しい移住者の意識の差でしょうか。ただ、わたし個人としては、今回の結果次第では南米側も(原告メンバーに)入ってネジを巻き直そうか、そんな気持ちもある」と話した。