2005年9月6日(火)
サッカーブラジル代表は四日、首都ブラジリアのマネ・ガリンシャ競技場でチリ代表とのドイツW杯の南米予選に挑んだ。アドリアーノの三得点を含む五対〇で快勝し、唯一の全十八大会出場を勝ち取った。
大会王者として予選を免除された九八年大会を除くと、近年のブラジルは予選に苦しんできた。九四年、二〇〇二年の両予選ではともに最終節までもつれ込み、辛うじて予選突破を決める有り様。「今予選は楽だった」。パレイラ監督が言うように、アルゼンチンに次いで南米二位につけるブラジルは残る二節を残して、チリに勝てば突破が決まる状況だけに、競技場は満員の観衆で埋まった。
試合の行方と並んでこの試合で注目を集めたのが「クアルテット・マジコ(魔法の四人組)」と評されるカナリア軍団の攻撃陣だ。先日、圧倒的な攻撃力で優勝したコンフェデ杯のメンバーでは、ロナウジーニョ・ガウショを累積警告で欠くが、ロビーニョとカカー、アドリアーノに加え、エースのロナウドが復帰。その豪華な顔ぶれがフッテボール・アルテ(芸術サッカー)を披露すると誰もが期待した。
引き分け狙いのチリに対し、ブラジルは開始早々から優位に試合を展開し、前半十一分、CKからファンが頭で合わせて早々の先制点。さらに同二十一分には「四人組」がその力を見せ付けた。ロナウジーニョに代わって中盤の組み立てを担当するロビーニョが右サイドのアドリアーノにボールを供給すると、カカーとロナウドがパス交換し、最後はゴール前に現れたロビーニョが押し込んだ。
自力で大きく劣るチリが戦意を喪失したこともあり、前半だけでさらにアドリアーノが二点を追加し、四対〇で試合を折り返す。
唯一の懸念材料は、これまで絶対的存在として君臨してきたロナウドだ。昨年十月以来、セレソンでのゴールがない背番号九は、この日もほとんどいい場面がないまま前半で退いた。「交代は自分から申し出た。点差もあったし、無理する場面じゃない」と余裕の表情を見せたが、その心境は複雑だ。
FWのレギュラーの座二つを巡る争いでは、アドリアーノとロビーニョがライヴァルとなるが、アドリアーノは後半にも力を見せ付ける。暑さもあり、双方ともに動きが落ちたが、終了間際に再びロビーニョのパスを豪快に蹴りこみ、ハットトリック(一試合三得点)完成。強烈にレギュラー獲得をアピールした。
その自由奔放なプレーから「国民の歓喜」の異名を取った天才選手ガリンシャの名前を抱くスタジアムで、その名に相応しい攻撃サッカーを披露したセレソン――。もはや本大会で優勝できるか、は国内の関心でなく「どのように華麗に優勝するか」という贅沢な課題を突きつけられたパレイラ監督。出場権獲得とともに、新たな挑戦が始まった。