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当落は選挙費用次第=政治理念を軽視=ねつ造された虚像が先行=実費は契約額の数倍

2005年9月7日(水)

 【ヴェージャ誌一九二〇号】ブラジルの選挙費用は過去十五年間に法外に高価なものとなった。選挙費用が世界一高いだけでは済まず、政治と民主主義を危機に陥れ、経済へ悪影響を及ぼす。この現象は政党や選挙制度の破綻をもたらし、政治理念の軽視と政策論争を疎んじさせた。その結果、ねつ造されたいい加減な虚像が先行し、広告業者の戦略に乗せられ、莫大な費用をかけた宣伝戦が勝敗を決することになった。こうなると政治理念から離れた虚像の独り歩きが純然たる駆け引きの材料になる。
 選挙のマーケティングとは、どんな仕組みなのか。立候補者はマーケティング業者に一定額を示し、業務契約を結ぶ。しかし、業者は選挙裁へ登録した金額の何倍かの経費を掛け、選挙後に差額を清算する。清算は裏金または海外隠蔽資産、不正入札などで決済する。候補者が落選したら、差額は丸損になる。
 ルーラ大統領の場合、メンドンサ氏に七〇〇万レアル払うことで契約を結んだ。ところがメンドンサ氏は二五〇〇万レアルを掛けた。差額一八〇〇万レアルは選挙後、清算することにした。メンドンサ氏はヴァレーリオ氏から裏金で一〇〇〇万レアルを受け取った。
 残りの八〇〇万レアルは他の業務契約へ繰り込み、年利二〇%の配当で四六〇〇万レアルへと膨れ上がった。他の契約を含めメンドンサ氏の対政府債権は、二億二九〇〇万レアルとなった。
 立候補者が凡人で特に優秀でない場合、何らかのイメージをデッチ上げる。イメージの売り込みに、信念や信条は無用だ。幻想に裏打ちされた虚像とフィクションを創作する。ルーラ大統領の「ブラジル国民に告ぐ」という声明文は、その典型でインテリ層をまんまと抱きこんだ。
 選挙費用のカラクリは政治に弊害を残すことを有識者が叫んでいた。しかし、それがハッキリ分かったのはつい最近だ。莫大な選挙費用のツケが組織的汚職を生み出した。選挙が実施された当初、選挙資金は寄付で賄われていた。
 米国の選挙資金は個人の献金でまかない、企業は献金をしない。ブラジルは反対だ。ブラジルの企業家は、国税局の法人税監査を受けないよう普段から裏金つくりに励む。そして支持する政党の政権獲得を夢見る。
 選挙裁に登録された金額の三倍が、選挙費として実際に使われる。登録金額の二倍の金が法の網を潜ってドンブリ勘定で罷り通る。この金は、どう扱おうと何ら法的束縛を受けない。
 金があれば、支持票の買収や連立協定ができる。政党の裏帳簿は、企業の裏帳簿とつながっている。企業の裏帳簿は、ほとんどが麻薬や武器密売などの違法資金で、単なる脱税のへそくり資金ではない。
 ルーラ大統領は全ての政党が裏帳簿を使っており、PTだけの専売ではないとうそぶいた。しかし、問題はそんな単純ではない。国家ぐるみで、犯罪に参加しているのだ。ヴァレーリオ氏が証言したように、全ての広報業は汚職組織の上に成り立ち、政党を財政支援している。
 ヴァレーリオ氏はいう。過去に大統領の当選に協力した広報業者は、みんなご馳走に預かり、私腹を肥やした。政府機関の甘い汁にありついた人間はゴマンといる。皆スネに傷があり、偉そうなことをいえる人間は一人もいないと。