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親殺しの娘を何故釈放?=フツーの生活満喫=実行犯の釈放は拒否なのに…=裁判は長い順番待ちの後

2005年9月16日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】富豪の両親を恋人兄弟に惨殺させて世間を震撼させたスザネ被告が仮釈放されて七十四日が経過した。サンパウロ市郊外にある身許引受人である父親の友人の別荘に身を寄せていたが、現在ではサンパウロ市内でフツーの生活に戻っている。目につく場所への出入りは控えているが、たまの外出では多忙を極める一千七十万人のパウリスタッ子の目にとまることなく開放された気分になりつつあるという。しかしいっぽうで、関係者やマスコミでは、刑が確定すれば二十四年から六十二年の量刑になる被告に対して何故仮釈放なのか、司法体制も含め議論が続いている。
 スザネ被告の仮釈放が改めて問題視されるに至ったのは、殺害実行犯の同被告の恋人兄弟が九日、仮釈放を申請したのに対し、裁判所が拒否して却下したことにある。スザネ被告の仮釈放の理由として裁判所は、規定の未決拘留期間が過ぎたこと、および改悛の情が伺えることに加え、犯罪を立件する証拠が出揃い、これ以上の証拠物件の提出は考えられないことから仮釈放による証拠隠滅の恐れは無いことを挙げている。
 これに対し恋人兄弟は同罪であり、状況は全く同じはずなのに彼らには仮釈放を認めないのはおかしいとの疑問が沸き上がった。関係者は裁判長や判事によって法の解釈が異なることから起こることで、一審と二審の判決が違うのは常で、司法界の体質に問題があると指摘している。
 いっぽうでスザネ被告らに対して証拠が出揃って立件が可能だとしておいて何故裁判を開始しないのかと指摘する声も多い。
 これにつき裁判所の説明によると、裁判は禁固刑の未決囚が優先されて順に条件付保釈(セミ・アベルタ)最後に仮釈放となるという。これからすると禁固刑の裁判がなくならない間スザネ被告の裁判は開審されることなく数年先あるいは時期不尚で、スザネ被告はフツーの生活を満喫できることになる。現在サンパウロ州には服役囚の四%に相当する一万人近い女囚が裁判を待っているとのこと。
 服役囚の間では富裕階級の犯罪者を憎む風習がはびこっている。男子刑務所では強姦罪が最低とされて犯人らは所内でリンチを受け死に至ることもある。そのため強姦犯人らの専用の監房があるほどだ。女囚では貧困や家庭内暴力が原因で犯罪に走るケースがほとんどで、スザネ被告のように何不自由のない階級が犯罪者として刑務所入りすると敵意を持って迎えられる。スザネ被告が当初収監されたカランジルー女子刑務所では、彼女の殺害を目的とした暴動が二度発生している。いずれも看守の機転で難を逃れた。
 女囚の中には無実を主張しながら未決囚の禁固で二年以上裁判を待っているのが数人おり、彼女らは一様に「裁判官や刑務所幹部は、金持ちや有名人ばかりを相手にして、我々貧乏人は眼中にない」と、スザネ被告と自分らの差別待遇は当然のこととして半ばあきらめ状態で受け止めている。