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急成長遂げる刑務所内産業=低コスト、社会復帰にも貢献=サンパウロ州

2005年9月16日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】サンパウロ州内で刑務所内就労が急成長を遂げ、私企業の工場が所内に進出、新たな刑務所産業として注目を集めている。とくに金属部門では進出が顕著で、工場の一部を持ち込んだり新設したりして製造に当たらせている。
 現在サンパウロ州内でこの分野の就労者は八千人で、今後ますます増加傾向にある。就労者は企業の直接雇用で一日六時間から八時間勤務で月給は最賃の三百レアル、受刑者はこの給料の二五%を刑務所運営費として差引かれる(この費用は刑務所清掃や整備として労役するほかの受刑者の給料に当てられる)。さらに三日就労すると刑量の一日分が減刑される。一年働くと量刑の三分の一が減刑されることになり、固定給とともに好評で応募者が殺到している。
 従来の刑務所内作業は州当局の管制下にある服役者保護財団が、受刑者のユニフォームや外部からの注文を受けて縫製や家具、事務用木工製品の製造に当たらせており、その数は三万四千人となっている。これは五年前の三三%増になっているものの、受刑者の数が二〇〇〇年の二・五倍に相当する十三万七千五百人に膨れ上がった現在では、ほんの一部が作業に従事していることになる。
 さらにこれらの作業は州政府の予算と、製品の売り上げで積み立てられる基金から支払われるため、時給や成功報酬の低賃金となっており、金属部門の企業の直接雇用は固定給とともに刑務所の経費削減につながる画期的なものとなった。
 服役者にとっては固定給のほか、技術を身につける利点があるが、企業にとっては社会復帰活動への協力という大義名分にともない利益につながる利点がある。まず固定給の最賃は、工場の正規従業員の最低ベースである五八〇レアルよりも格安であること、工場での給与ベースはサンパウロ州金属労組との協定で定められているが、刑務所内就業者は労組に属さないため協定通りの給与に束縛されない。さらに所内で発生する所得税や機器設置に生じる諸税の免税の特典があり、製品のコストダウンに貢献している。
 刑務所産業の急成長による本社工場での雇用縮小や失業を懸念する向きも多い。これを受けてサンパウロ州金属労組では州政府との会合で、所内雇用を企業従業員の一〇%に制限する案を示す動きが出ている。その上で刑務所内就労者を出所後、優先的に採用することで失業対策および社会復帰につながるとしている。
 これに対し四カ月前から刑務所内就労を実施している鋳物大手のポブナーメタイス社では現在三十七人を就労させているが、さらに十八人を増員し、また別の刑務所の新設部門で新たに三十人を雇うことを明らかにしている。これによるコストダウンで本社工場の二百二十人の従業員の待遇改善ができ、相乗効果が表れると言明している。
 しかし反面、人口の少ない小都市で企業の雇用への依存度が高い地域では、労組の危惧が現実となって表面化している。モコカ市刑務所内で生産を行っている自転車部品工場では、本社工場の従業員が二百五十人に対して所内では百五十人に膨れ上がり、地域での雇用体系を変えている。サンジョゼ・ドス・カンポス市では全従業員数の三分の二を所内就労に回した企業が出て、訴訟問題に発展しているケースもある。